Chapter 205
九条蓮は本当に幸せ者だよ
実はさっきから、こっそり作戦を練っていたのだ。
この機会に二人を酔わせてしまおうと考えていた。
お酒を飲めば本音が出るし、酔ったらそのまま…えへん…あんなことやこんなことに…
今日の夜が明けたら、突然甥っ子ができてるかも…なんて、凛は素晴らしい光景を想像していた。
口元にはいたずらな笑みが浮かび、まるで小狐のようだった。
神谷海斗はずっと凛の様子を見ていて、今のその笑顔を見て、この女はまた何か企んでいるなとすぐに察した。
彼は九条蓮と美咲に目をやり、すぐに状況を理解した。
美咲は少し眉をひそめて、ためらいがちに言った。「でも、明日仕事があるし、お酒はちょっと…。ジュースにしようかな。」
「えー、美咲、そんな水を差すこと言わないでよ。九条悠真との裁判に勝ったんだよ?こんな大きなこと、今祝わなくていつ祝うの?それに、ちょっとくらいなら大丈夫。酔っ払ったらそのままベッドに直行すればいいんだし!」
美咲は少し考えて、凛の言うことも一理あると思い、もう反対しなかった。
「…わかった。」
「そうこなくっちゃ!さあ、早く食べよ。お腹ペコペコ!」
凛は美咲を席に引っ張って座らせ、ご飯をよそい、食器を並べてあげた。
食事が始まると、九条凛は体裁を気にするのも忘れて、夢中でがっつき始めた。頬いっぱいにご飯を詰め込み、口の中がいっぱいのまま「美味しい、美味しい」と何度も呟いている。
その様子を隣で見ていた神谷海斗は、心配そうに手を伸ばして背中を軽く叩き、「ゆっくり食べて、喉に詰まらないように気をつけて」と声をかけ、水の入ったグラスを差し出した。
九条凛はそれを受け取りながら、神谷海斗にお礼を言った。
二人のやり取りを見ていた高橋美咲は、少し疑わしげな気持ちになった。
さっき九条凛は神谷海斗に片想いしていると言っていたが、高橋美咲の目には、神谷海斗も九条凛のことをとても大切にしているように見えた。
だが、ふと九条蓮のことを思い出す。彼もまた、気配りができて温かい人だ。
親友同士なのだから、神谷海斗も似たような性格なのは当然だろう。だからこそ二人は気が合うのかもしれないし、そういうところが誤解を生みやすいのかもしれない。実際はただ紳士的なだけなのだろう。
次に、九条凛が缶ビールをプシュッと開けて、みんなに一本ずつ配った。
ところが、飲み始めてしばらくすると、酔っ払ったのは高橋美咲や九条蓮ではなく、九条凛自身だった。顔を真っ赤にして酔い潰れ、テーブルを叩きながら森岡千隼のことを「成り上がりのクズ野郎!」と激しく罵り始めた。
「うっ…森岡千隼なんて最低!」
「あんな恥知らずのゴミ、消えちゃえばいいのに!」
しばらく罵倒を続けて、ようやく気が済んだのか、九条凛は高橋美咲の肩に腕を回し、にやにやと笑いながら「美咲、へへへ、もうすぐ私たち家族になるんだよ!」と言った。
「家族ってどういう意味?」と高橋美咲は困惑して尋ねた。
「つまりね…」と九条凛は言いかけて、そこで頭が真っ白になったように止まり、しばらく考え込んだが、何を言おうとしていたのか思い出せなかった。
九条蓮の表情がさっと険しくなる。
九条凛が酔いすぎて、うっかり自分の正体を口走るのではと心配になった。
すぐに九条蓮は神谷海斗に目配せし、九条凛を連れて行くよう合図した。
九条蓮のサインを受け取った神谷海斗は立ち上がり、九条凛を支えながら「凛、もう酔ってるよ。家まで送るから」と優しく声をかけた。
「やだ、まだ飲みたい!酔ってないもん。何するの、離してよ!」と立ち上がった途端、九条凛はふらついて倒れそうになった。
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