Chapter 201
少しずつ、この人に頼るようになって
高橋美咲はふと、これから九条インターナショナルで働き始めることを思い出し、そして今後も桜井奈緒が自分の上司として君臨し続けることを考えた。
眉をひそめて、どうしようもないため息をつく。
九条蓮は高橋美咲の様子に気づき、「どうした?」と声をかけた。
彼女はため息をつきながら、「今日、桜井奈緒を完全にやり込めたのに、結局九条インターナショナルではあの人が上司のまま。これからどんな手を使ってくるか分からないし」とこぼした。
九条蓮の表情がわずかに曇る。
これはどうしようもないことだった。桜井奈緒は高橋家が任命した責任者であり、彼女を会社から外すことはできない。
だが、九条蓮は高橋美咲に最大限のサポートをするつもりだったし、彼女がいじめられることも絶対に許さない。
九条蓮は「心配しなくていい。九条社長が君は桜井奈緒の管轄下じゃないって言ってた。君は九条インターナショナル本社から派遣されたデザイナーだから、彼女にはどうすることもできない」と告げた。
高橋美咲の目が一気に輝く。
「本当?」
彼女は考えた。九条社長が自分を雇いたいと思ってくれているのは分かるが、こういう細かいことまで気にするタイプではない。きっと誰かが伝えてくれたか、裏で手を回してくれたのだろう。
もしかして九条蓮が…?
高橋美咲は九条蓮を見上げ、期待を込めて「九条蓮が九条社長に言ってくれたの?」と尋ねた。
「うん」
九条蓮は本当に気が利く人だ。
彼は一瞬で彼女の不安を解消してくれた。今回の件も、九条蓮が助けてくれなければ、こんなにスムーズに解決できなかったはずだ。
気づかないうちに、彼女はこの男性に少しずつ頼るようになっていた。
…
裁判所の控室。
桜井奈緒は椅子に座り、顔色は死人のように青ざめていた。その隣では九条悠真が怒りをあらわにしている。桜井奈緒のしたことに、彼は激しく憤っていた。
だが桜井奈緒は高橋家の人間であり、今や高橋家が九条インターナショナルに新しい部署を作ってくれた。その恩恵を自分も受けている以上、どれだけ怒りや不満があっても、彼女に本気で手出しすることはできない。
九条悠真は我慢していたが、ついに堪えきれず、せめて言葉で鬱憤を晴らそうとした。「妊娠は嘘だったのか?よくも俺に嘘をついたな!お前の口から出ることに本当のことなんてあるのか?」
自分が悪いと分かっている桜井奈緒は、九条悠真に言い返すこともできない。
彼女は一歩前に出て、「悠真、私が悪かったの。ただ、あの時は頭にきてたの。高橋美咲があなたを誘惑したから、彼女に一泡吹かせたかっただけ」となだめるように言った。
九条悠真は荒い息をつき、怒りが収まらない。
婚約の件で既に社交界の笑い者になっていた。
ようやく高橋家からの追い風を得て、これから一気に挽回しようとしていた矢先、また桜井奈緒がこんな騒動を起こすとは!
桜井奈緒は、今や高橋家の後ろ盾がある以上、九条悠真が自分のしたことを知っても、どうせ何もできないと分かっていた。
もし自分が高橋家の長女でなければ、その後のことなど考えたくもない。
とにかく、九条インターナショナルで一刻も早く地位を固めなければ。
桜井奈緒は心の中の思いを抑え、九条悠真の胸元にそっと手を添えてなだめる。「悠真、今回は私のやり方が悪かった。もう怒らないで。これからは新ブランドに集中しましょう」
その言葉を聞いて、九条悠真の怒りも少し収まった。
今はそれしかない。
九条悠真の目が暗くなり、「高橋美咲の援護は全部断ったはずなのに、どうやってあんな証拠を集めたんだ?」と問いかける。
あれだけのもの、裏で誰かが動かなければ手に入るはずがない。高橋美咲には他に後ろ盾がいるのか?
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