Chapter 202
少しずつ、この人に頼るようになって(続き)
桜井奈緒の表情も曇る。
今回、最後の最後で自分の成功が崩れたのは、高橋美咲が出した証拠のせいだった。彼女がどうやってそれを手に入れたのか、桜井奈緒にも分からない。
「高橋美咲が相沢翔みたいなパトロンを見つけて自分を守ったなら、他にも誰か見つけるのは当然でしょ。別に不思議じゃないわ」
その言葉を聞いて、九条悠真の心の中の悔しさはさらに強くなった。
高橋美咲は以前、純潔を守るだの、結婚するまで一緒にならないだのと言っていたのに、裏ではこんな女だったとは。しかも自分には一切なびかず、他の男に身を任せるなんて。
絶対に高橋美咲が誰に取り入ったのか突き止めてやる。
九条悠真の表情は何度も変わり、深く息を吐いて「俺たちの評判はもう最悪だ。しばらくは大人しくして、これ以上問題を起こすな」と言った。
「分かったわ」
「俺は外に出て、外の記者どもを追い払ってくる。お前はここで休んでろ」
九条悠真が出ていった後、桜井奈緒のアシスタント・陽子がようやく外からこっそり入ってきた。桜井奈緒は彼女を一瞥し、「例のネット荒らし、ちゃんと手配した?」と尋ねる。
「は、はい。前はファンが自発的に高橋美咲の美咲壁画スタジオを荒らしてましたけど、今回はこっちで人を雇ってるので、バレることはないと思います」
その言葉を聞いて、桜井奈緒はようやく気分が晴れた。
全部バレたってどうだっていい。高橋美咲を社会的に潰してやる。
今の高橋美咲は壁画の注文くらいしか受けられないし、今回の件でその後の予約も全部キャンセルになっている。
このまま攻撃し続ければ、高橋美咲は仕事もなくなり、最終的には清掃員にでもなるしかないだろう。
そう思うと、桜井奈緒の胸のモヤモヤもかなり晴れた。
…
翌朝、高橋美咲は九条蓮を連れて市場へ行き、たくさんの食材を買い込んで自宅で豪華な料理を作るつもりだった。
帰りの車中、九条蓮はしばらくバックミラーをじっと見つめ、急に表情を曇らせた。
「どうしたの?」と高橋美咲が驚いて尋ねる。
「誰かにつけられてる」
高橋美咲もその視線を追いかけてみると、確かに後ろからぴったりと車がついてきている。スピードを上げれば向こうも上げ、落とせば落とす。
誰が自分たちを尾行しているのか?
九条蓮のような専属運転手をつけている人間をわざわざ尾行する理由はない。となると、問題は自分にあるのだろう。
東京で自分に敵なんていないはずなのに。
彼女の敵は、九条悠真という元カレと、桜井奈緒という白蓮系の元親友だけだった。あの二人が誰かを差し向けて自分を尾行させているのだろうか?
高橋美咲は少し苛立ちを覚えた。昨日の裁判で負けたことが、二人にはどうしても受け入れられなかったのだろうか。
九条蓮は車をそのまま代官山パークレジデンスへと走らせた。
後ろの車は警備員に止められ、「住民以外は入れません」と告げられた。
その車に乗っていたのは、九条悠真に雇われて高橋美咲を調査している者たちだった。さっきも何枚か写真を撮ったが、運転席の男の顔は一枚も写っていなかった。
ここまで尾行してきたものの、これ以上中に入ることはできなかった。
仕方なく、彼らは携帯を取り出し九条悠真に電話をかけた。
「九条マネージャー、さっき代官山パークレジデンスまで尾行しました。高橋美咲の車はそのまま中に入り、私たちは外で止められました」
電話の向こうで九条悠真の顔色が曇り、苛立った声で「分かった。そこを見張っていろ。彼女が出てくるまで絶対に離れるな」と命じた。
代官山パークレジデンスは九条ホールディングスの物件だ。もちろん彼も場所は知っている。自分が入社したばかりの頃、九条蓮に部屋を頼んだことがあったが、「すでに完売で余りはない」と断られた。
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