Chapter 20
社長が弁当を持ってきた
そう言って、ドアを閉めた。
九条蓮は弁当箱を見下ろし、少し眉をひそめる。どこか戸惑ったような表情だ。
この女、昨夜誘惑に失敗したから、今度は作戦を変えたのか?
男を落とすには、まず胃袋からってことか?
九条蓮は九条インターナショナルの駐車場に車を停めた。美咲が残していった弁当箱を捨てようとしたが、朝のキッチンで忙しそうにしていた細い後ろ姿を思い出した。
少し迷った末、結局弁当を持って社内に入った。
専用エレベーターで上階へ。
社長室の前で待っていた数人のアシスタントたちは、九条蓮が小花柄の弁当袋を持って現れたのを見て、目を丸くして驚いた。
今、何を見たんだ?
九条社長が弁当を持参?しかもこんな可愛い袋で?あの冷徹な九条社長に彼女ができたのか?
いや、待てよ!もしかして九条社長の妹、九条凛が作ったのかもしれない。
真壁直人が外から入ってきて、アシスタント二人がこそこそと首を伸ばして覗いているのを見て、「何見てるんだ?」と尋ねた。
二人はすぐに声を潜めて「さっき九条社長が九条お嬢様の手作り弁当を持ってきたんですよ。九条お嬢様、本当にお兄さん思いですね…」と話した。
真壁直人は口元を引きつらせ、仕方なく幻想を壊す。
「九条凛は料理できないよ。」
九条凛が料理できない?じゃあ、九条蓮の弁当は誰が作ったんだ?
高橋美咲は東森通りをしばらく歩き回り、必要な塗料をいくつか注文して、店主に九条インターナショナルまで届けてもらうよう頼んだ。
お昼時になり、彼女はドリンクショップを見つけて飲み物を買い、そのついでに店員に弁当を温めてもらった。外の椅子に腰掛けて、ゆっくりと食事を楽しむ。
ちょうど食べ始めようとしたその時、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「悠真くん、この近くにすごく美味しい家庭料理のお店があるの。一緒に行ってみない?」
その声……まるで幽霊のように、しつこく付きまとってくる。
高橋美咲はわずかに眉をひそめた。振り返らなくても誰かは分かる。桜井奈緒、あの白蓮女以外に誰がいる?無視を決め込んで、何も見なかったふりをするつもりだった。
彼女はカリフラワーを一口食べようとしたが、桜井奈緒に見つかってしまった。「美咲?こんなところで何してるの?」
仕方なく高橋美咲は振り返る。やはり桜井奈緒と九条悠真だった。桜井奈緒は九条悠真の腕にしっかりと手を絡め、二人はとても親しげに見えた。
今日の桜井奈緒は淡いグリーンのロングドレスに、艶やかな黒髪を肩に流している。彼女は九条悠真の腕をさらに強く抱き寄せ、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。満足げで得意気な表情だ。
高橋美咲は少し呆れてしまった。
どうして今まで桜井奈緒がこんな裏表のある女だと気づかなかったのだろう。
親友だと思って、九条悠真とのことも色々話してしまった。それが逆に、桜井奈緒の略奪心に火をつけてしまったのかもしれない。
九条悠真は高橋美咲を見るなり、表情が一気に険しくなった。
彼は苛立った様子で言い放つ。「高橋美咲、俺たちをつけ回してるのか?この前渡した小切手じゃ足りなかったのか?本当に恥知らずだな。これ以上しつこくするなら、後悔させてやるぞ!」
高橋美咲は思わず目をむき、つい笑ってしまった。
九条悠真、被害妄想がひどすぎない?
つけ回す?そんな暇も、そんなくだらないことをする気もない。
「九条悠真さん、自意識過剰もほどほどにしてください。女を何人も手玉に取るようなゴミ男なんて、こっちから願い下げですし、絶対にしがみついたりしませんから。」
「ゴミだと?」九条悠真の顔がさらに険しくなり、怒りをあらわにした。「そんなゴミだと思ってるくせに、前は俺と付き合ってたんだろ?」
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