Chapter 197
逆転の余地なし
残りのコメントも一斉に、桜井奈緒に「和解なんてしないで」と呼びかけていた。
この裁判を待つ間ずっと、桜井奈緒は時間があれば配信をして、自分が被害者だと訴えていた。
そのファンたちは毎日見守っていて、怒りはすでに頂点に達していた。当然、高橋美咲が罰を受けるところを見たいと思っていた。
高橋美咲は桜井奈緒の弁護士の言葉を聞いて、口元にうっすらと笑みを浮かべた。
彼女は眉を上げて鼻で笑った。「そう?それは奇遇ね。私もこの件、和解するつもりはないわ。」
その瞬間、会議室の空気が一気に凍りついた。
高橋美咲の弁護士以外、何人かは「高橋美咲、大丈夫?」とでも言いたげな心配そうな表情で彼女を見ていた。まるで今の発言が冗談にしか聞こえないかのようだった。
裁判長が軽く咳払いをして言った。「双方とも和解の意思がないようですので、正式に開廷し、審理を進めます。」
数人が同時に立ち上がり、法廷へと向かった。
桜井奈緒が高橋美咲の横を通り過ぎるとき、小声で言った。「美咲、あなたが悠真と私の子どもを死なせたの。ちゃんと説明してもらうから。私なら、こんな無駄な抵抗はやめるけど?」
高橋美咲は心の中で嘲るように笑った。
桜井奈緒はまだ自分の計画が完璧だと思っている。今はあんなに強気だけど、後であの映像と買収された医師の録音を見たとき、どんな顔をするのか——。
「くだらないこと言わないで。後で泣くのが誰か、見ものね。」高橋美咲は目をそらし、桜井奈緒を避けてそのまま立ち去った。
九条悠真の顔は暗く険しかった。高橋美咲はいつもこうで、どんな時も絶対に頭を下げようとしない。もし少しでも折れていれば、今こんなことにはなっていなかったはずだ。
後で惨めに刑務所に入ることになれば、きっと頭を下げて負けを認めることを覚えるだろう。
高橋美咲の傲慢な態度を見て、桜井奈緒は眉をひそめた。
なぜか、心の奥にかすかな不安がよぎった。高橋美咲があんなに自信満々なのは、何か切り札でもあるのだろうか?
すぐに、その疑念を打ち消した。
絶対に、逆転なんてありえない!
外に出ると、高橋美咲は傍聴席に九条蓮と九条凛が座っているのを見つけた。九条蓮は普通の白シャツに黒のスラックス姿。背が高くすらりとして控えめな雰囲気だが、整った顔立ちは人混みの中でもひときわ目を引いた。
九条凛は高橋美咲が出てきたのを見ると、ガッツポーズで応援してみせた。
二人がわざわざ応援に来てくれたことに、高橋美咲の口元がふっとほころんだ。
それだけで、ひとりじゃないと感じられた。
裁判が始まった。原告側、つまり桜井奈緒の側がまず主張と事実を述べ、証拠を提出する。話を聞いた後、裁判所は証人を呼んで証言させた。
証人として出てきたのは、現場で高橋美咲と桜井奈緒のやり取りを目撃した九条インターナショナルの社員たちだった。女性二人と男性一人、計三人だ。
裁判官が尋ねた。「あなた方は現場にいて、高橋美咲が桜井奈緒を突き飛ばし、流産させたのを見ましたか?」
三人は同時にうなずいた。「はい、見ました。」
そのうちの一人が言った。「私たちは外壁の壁画を見ていたんですが、悲鳴が聞こえて振り返ったら、桜井奈緒さんが地面に倒れていました。」
桜井奈緒の弁護士がすかさず言った。「桜井奈緒が妊娠していると知りながら、被告は故意に突き飛ばし、お腹の子どもを死なせたのです。」
厳しい表情で続けた。「母親にとって自分の子どもを失うことがどれほど辛いか、裁判所には被告に厳罰を下し、天国の子どもの魂を慰めていただきたい!」
この言葉に、配信を見ていた視聴者たちの怒りが一気に爆発し、コメント欄は非難の嵐となった。
「高橋美咲、絶対わざとやったでしょ!」
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