Chapter 192
相沢翔よりも頼れる存在
色々なことを助けてくれただけでなく、今まで悩んでいた問題まで全部解決してくれた。相沢翔よりもずっと頼りになる!
もしアシスタントを辞めても、どんな仕事でもきっと成功するだろう。
九条蓮の魅力は高橋美咲の中で急上昇した。
気づけば2日が過ぎ、高橋美咲は病室でスマホを眺めていた。
高橋美咲壁画スタジオは今や大混乱。公式サイトのドメインがハッキングされ、アクセスすると「殺人犯」「悪女」「毒婦」などの赤い文字で埋め尽くされていた。
コメント欄も荒れ放題で、画面いっぱいに罵詈雑言が並ぶ。桜井奈緒にこんなに支持者がいるとは思わなかった。
高橋美咲は適当にひとつタップしてみた。
九条凛が言っていた通り、桜井奈緒の配信アカウントには100万以上のフォロワーがいるらしい。ファンの勢いも相当なものだ。
このままでは、もう二度と注文は来ないだろうし、仮に来ても妨害されるに違いない。
幸い、九条インターナショナルに入ったから、これからの生活の心配はない。
その時、病室のドアがカチャリと開いた。
高橋美咲が振り向くと、野上千紗が立っていた。彼女はドアを閉めて中に入ってきた。
野上千紗はベッドのそばに立ち、少し躊躇して「高橋さん……」と声をかけた。
高橋美咲に呼びかけた後、野上千紗は黙り込んで指先をいじり、不安そうな様子だった。
高橋美咲は静かにスマホをしまい、野上千紗を見て「証拠は取れた?使えるかどうか見せて」と尋ねた。
その言葉を聞いた野上千紗の顔には、明らかに後ろ向きな表情が浮かんだ。
彼女は唇を噛みしめ、小さな声で「高橋さん、よく考えたんですけど、やっぱり協力できません。桜井直樹は私の夫です。彼を刑務所に送っても私には何の得もないし、義母にも責められるかもしれません……」と告げた。
あの日家に帰ってから、野上千紗はずっと悩み続け、寝言でうっかり義母に聞かれてしまった。
義母は自分の息子を告発しようとしていることを知り、野上千紗を叱りつけた。その結果、彼女は気持ちが変わったのだった。
高橋美咲は内心で冷笑した。
野上千紗が入ってきた瞬間、もう結果は予想できていた。
やはり、野上千紗は土壇場で気が変わり、約束を反故にした。九条蓮が二重の準備を勧めてくれて本当によかった。
九条蓮の読み通り、野上千紗はやっぱり逃げた!
もし野上千紗だけを頼りにしていたら、今ごろ全てが水の泡になり、2日間も無駄にしていたはずだ。
高橋美咲は腕を組み、「もう協力する気がないなら、何しに来たの?言い訳でもしに?」と冷たく言った。
考えてみれば、裁判当日に気が変わらなかっただけでも、事前に心の準備ができて助かったとも言える。
野上千紗は深呼吸し、高橋美咲を見て「今日来たのは、このことを誰にも言わないでほしいからです。桜井直樹は今、キャリアの大事な時期なんです。もし暴露されて刑務所に行ったら、全てが終わってしまうから……」と訴えた。
その日、野上千紗は裏切りに打ちのめされ、怒りの真っ只中にいた。だが後になって、義母に叱られ、桜井直樹にしばらくなだめられたことで、気持ちが変わった。
高橋美咲が桜井直樹が桜井奈緒から利益を受け取っていたことを知ったと分かっていた野上千紗は、高橋美咲が桜井直樹を告発するのを恐れ、わざわざ頼みに来たのだった。
野上千紗が涙を流しながら必死に懇願する姿を見て、高橋美咲はわずかに目を伏せ、心の中で葛藤がよぎった。
一瞬、野上千紗の頼みを聞き入れてもいいかもしれないと思った。
だが、もしこの件を告発しなければ、苦しむのは自分自身だ。今回、桜井奈緒は明らかに攻撃的に仕掛けてきており、単に名誉を傷つけるだけでは済まない。傷害の罪を着せて、刑務所送りにしようとしているのだ。
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