Chapter 182
九条蓮は私を買いかぶりすぎている
高橋美咲は何があったのか詳しくは語らなかったし、九条蓮も特に気にする様子はなかった。ただうなずいて、「今からでも遅くないよ」と言った。
「本当に?今からでも遅くないの?」高橋美咲はつぶやいた。
「もちろん。」
九条蓮の表情を見ると、まるで自分ならもっと上手くやれると信じてくれているようだった。
高橋美咲は大きな励ましを感じ、心臓がドキドキと高鳴った。
なんてこと、急に九条蓮にアドレナリンを注入されたみたいで、九条インターナショナルのデザイナーになる決意がますます強くなった。
九条社長の条件を受け入れれば、映像も手に入り、潔白も証明できるし、九条インターナショナルでデザイナーになる夢も叶う。
自分にとってはメリットしかない。こんなに順調でいいのだろうか。
まるで夢を見ているような気がしてならなかった。
九条蓮はずっと高橋美咲の様子を見ていた。表情の変化から、彼女の心の中の答えをだいたい察した。彼女は九条インターナショナルに入ることに、少しの迷いもなく前向きだった。
九条蓮はうっすらと微笑み、「大丈夫かな?問題なければ契約書にサインしよう」と言った。
高橋美咲が土壇場で気が変わらないように、真壁直人にはすでに契約書を用意させてあり、彼女が同意したらすぐにサインできるよう手配していた。後々のトラブルを避けるためだ。
高橋美咲は完全に呆然としていた。
な、なにこれ?契約書?
本当にこんなに手際がいいの?まるで私が逃げ出すのを恐れているみたい。
高橋美咲が返事をする間もなく、九条蓮はすでに真壁直人に電話し、すぐに病院まで契約書を持ってくるよう指示した。
20分後、真壁直人が病室に現れた。
真剣な表情で契約書を取り出し、高橋美咲の前に差し出した。高橋美咲はそれを手に取り、内容を確認し、問題がないことを確かめてからサインした。
「高橋さん、これからは同僚ですね。分からないことがあれば、何でも聞いてください。」真壁直人はにこやかに高橋美咲に言った。
高橋美咲はまだ夢見心地で、「なんだか現実じゃないみたい…」とつぶやいた。
九条蓮は真壁直人に軽く目をやり、真壁直人はすぐにその意図を察した。
「それでは高橋さん、お休みのところ失礼しました。」と完璧なタイミングで部屋を出ていった。
そう言って、真壁直人は荷物をまとめて部屋を後にした。
九条蓮は高橋美咲のそばに歩み寄り、隣に腰を下ろして言った。「もう監視映像のことは心配しなくていい。俺が全部やるから。」
「じゃあ、私…」
「休んで。」九条蓮は有無を言わせぬ口調で言った。
「うん…」
高橋美咲は、今はもう頼れる人がいると感じていた。九条蓮がいれば、どんな困難も解決してくれる。運転手なのに、ここまでしてくれるなんて。
思わず目頭が熱くなった。
九条蓮は本当に素敵すぎる。
ふと高橋美咲はあることを思い出し、九条蓮をじっと見つめて不思議そうに聞いた。「でも、九条さんって九条社長の運転手なんだよね?それにしては随分権限があるみたい。監視映像の手配も九条さんがやってるの?」
さっきの九条蓮の口ぶりは、まるですでに勝利を手にしているかのような自信に満ちていた。
九条蓮は表情を変えずに、「運転以外にも、九条社長の身の回りのことは色々任されてるんだ」と答えた。
九条蓮は自分の役割をさりげなく広げておいた。これで今後、高橋美咲が九条インターナショナルで自分を見かけても、不思議に思わないだろう。
高橋美咲はすぐに納得し、「そういうことか…」と腑に落ちた様子だった。
九条蓮は九条社長のアシスタントでもあるのか。
しかもかなり信頼されているようで、将来有望に見えた。
高橋美咲はさらに、「じゃあ、これから毎日同じビルで顔を合わせるってこと?」と尋ねた。
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