Chapter 18
彼もまた九条蓮と呼ばれている
てっきり偽名かと思っていたのに、これが本名なの?
突然、高橋美咲はハッとして聞いた。「もしかして、わざと名前を変えたの?それとも、彼の代役のバイトでもしてるの?」
九条蓮はくすりと笑った。この女の想像力はなかなかだ、自分のために言い訳まで考えてくれるとは。
「うん」と、彼は柔らかく答えた。
九条蓮はまるで何も気にしていない様子で、罪悪感のかけらも見せなかったので、高橋美咲も深く考えず、あの“帝大野社長”と同じ名前だという事実をすんなり受け入れた。
夕食の席で、九条蓮は彼女の顔を立てて、きれいに全部平らげてくれた。
高橋美咲はもう九条蓮に自分の茶碗を触らせまいと決め、彼には座って休んでいてもらい、自分から進んで後片付けをした。
片付けを終えて部屋に戻ると、急に気まずさを感じた。
このアパートには部屋が一つ、ベッドも一つしかない。
つまり、今夜は九条蓮と同じベッドで寝るってこと?
高橋美咲は電撃婚を受け入れたとはいえ、見知らぬ男性と実際に一緒に寝るのは、やっぱり心理的なハードルが高かった。
彼女はしばらく自分を励まし続けた。
深呼吸をひとつ。
もう後戻りはできない。ここまで来たら、進むしかない。
覚悟を決めて、さっき買ってきたバスタオルなどを九条蓮に差し出し、恥ずかしそうに「先にシャワー浴びて」と言った。
九条蓮の視線が、彼女の照れた顔に落ちる。
なぜか、その言葉が妙に意味深に聞こえた。
高橋美咲はベッドに座り、バスルームから聞こえる水音を聞きながら、今日の九条家本邸での出来事がふと頭をよぎった。
九条蓮の完璧な体が脳裏に浮かび、頬がほんのり熱くなる。
その時、メッセージの着信音が彼女の思考を現実に引き戻した。
スマホを手に取って見ると、また九条凛からのメッセージだった。「美咲、準備はどう?あれの使い方分かる?教えてあげようか?」
「美咲、よく考えて。お腹ぽっこりで九条悠真に一発かますの、ダブルパンチで即死級だよ……」
高橋美咲はスタンプで「どっか行って」と返した。
その頃、バスルームの中で九条蓮の顔が曇っていた。彼は鼻梁をつまむ。シャワーを浴び終えて気づいたのだが、高橋美咲が持たせた荷物の中に、パジャマが一枚も入っていなかった!
わざとだとしか思えない。
自分が誰か知らなくても、厄介事を押し付けられた“お人好し”扱いで、色仕掛けまでしてくるとは!
怒りを抑えきれず、九条蓮はバスタオルを腰に巻きつけ、ドアを開けて部屋に出た。
バスルームのドアが開く音に、高橋美咲は反射的にそちらを向いた。
一目見て、思わず血を吐きそうになった。
男はライトの下に立ち、背が高く脚も長い。何より、服を着ていない!
蜂蜜色の肌がほのかに光り、バスタオルの下に隠れたセクシーなアドニスラインがちらりと見えて、思わずドキドキしてしまう。
高橋美咲は直視できず、顔を赤らめて「なんで服着てないの?」と聞いた。
九条蓮は笑った。
この女、よくも“盗人猛々しい”態度が取れるな?
わざと服を渡さず、裸で出てくるよう仕向けたのはそっちだろうに。
「シャワー浴びてくる」と、気まずい空気を感じた高橋美咲は、それを口実にバスルームへ逃げ込んだ。
九条蓮は五尺のベッドの前に立ち、眉間に深いしわを寄せた。蚊でも潰せそうなほどだ。
このベッド、ちょっと小さすぎないか?
高橋美咲はあの手この手で誘惑してくる。自衛策を講じねば。
九条蓮の視線が、近くに置かれた掛け布団に止まる。無表情のままそれを手に取り、ベッドに広げてそのまま寝転がった。
高橋美咲がシャワーを終えて出てくると、九条蓮はすでにベッドで眠っていた。
分厚い掛け布団を首元までしっかりかぶり、体は一切見えない。
高橋美咲は首をかしげた。暑くないのかな?
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