Chapter 177
大物を怒らせて(続き)
言い終わる前に、九条蓮の冷たい瞳に鋭い光が走った。
その場の空気が一気に凍りつく。九条凛は本当はもっと言いたいことがあったが、口から言葉が消え、何も言えなくなった。
「真壁、凛を家に送ってやれ。」
九条凛は何か言いたげに唇を開いた。
美咲のことが心配で帰りたくなかったが、明日には九条蓮の代わりに見張りに来るかもしれないと思い直し、大人しく真壁と一緒に病院を後にした。
深夜、高橋美咲は目を覚まし、喉の渇きと乾きに気づいた。
天井をぼんやりと見つめ、目には戸惑いの色が浮かぶ。誰かの気配を感じて横を向いた。
すると、九条蓮が椅子にもたれて眠っている姿が目に入った。
柔らかな灯りの下、彼の顔立ちはさらに美しく際立ち、顔から首筋にかけてのラインが長く滑らかで、完璧な曲線を描いていた。
九条蓮?どうしてここに?
高橋美咲は消毒液のかすかな匂いを感じ、周囲を見回してすぐに状況を理解した。
自分はきっと体調を崩したのだ。
助け出してくれたのは九条蓮で、今は病院にいるのだと。
高橋美咲の胸に温かなものが流れ、九条蓮を見つめる目が少し柔らかくなった。
この瞬間、何度も彼に助けられて心が動いたからなのか、それとも日々のやりとりの中で少しずつ好意が積み重なったからなのか、どちらにせよ、結局この人に惹かれてしまったのだと感じた。
だから、心が動いたから好きになったのか、本当に好きになったのか、そんなことを深く考える必要なんてない。
九条蓮が好きだ。
自分の気持ちをはっきりと認めた高橋美咲は、ふと九条蓮が自分のことを好きではないという事実を思い出した。彼にとって自分は、偶然から生まれた契約上のパートナーに過ぎない。
高橋美咲は自嘲気味に笑い、胸の奥に苦さが広がった。
ぼんやりしていると、九条蓮が何かを感じ取ったように目を開けた。最初に見たのは高橋美咲だった。
二人の視線が合い、一瞬、空気が静まり返った。
「九条蓮、助けてくれたのはあなた?」高橋美咲はかすれた声で尋ねた。
「ああ。」
その声のかすれ具合に気づいた九条蓮は立ち上がり、水を注ぎに行った。同時に、薬も数錠持ってきた。
高橋美咲は喉がカラカラだった。迷うことなく薬を手に取り、そのまま飲み込むと、大きなグラスの水を一気に飲み干し、ようやく落ち着いた気分になった。
九条蓮が彼女の隣に腰を下ろした。その瞳は暗く、危険な光を帯びている。
まるで何かの清算をしようとしているような雰囲気だった。
高橋美咲はカップを脇に置き、九条蓮の方を見た。「あなた……」
九条蓮は顔を強張らせ、冷たい声で言った。「俺が何て言ったか覚えてるか?」
何て言われたんだっけ?
高橋美咲の頭はまだ少しぼんやりしていて、すぐには反応できなかった。
しばらくして、ようやく九条蓮の言葉をぼんやりと思い出した。困ったことがあったら、彼に連絡しろと言われていたのではなかったか。
何かあった時、高橋美咲は一瞬だけ迷った。
でも、九条蓮に借りを作りたくなくて、結局連絡しなかった。まさか、最後に助けてくれたのが結局彼だったとは思いもしなかった。
高橋美咲は小さく咳払いをして言った。「今回もまた九条さんに頼んだんだよね、ごめんね、また大きな借りを作らせちゃって。」
高橋美咲の言葉を聞いても、九条蓮の氷のような表情は変わらなかった。むしろ、さらに険しくなった。薄い唇は真一文字に結ばれ、明らかに機嫌が悪い。
その厳しい視線の下で、高橋美咲は思わず戸惑いを覚えた。
おそるおそる尋ねた。「あ、あの……すごく大きな代償を払ったの?」
もし九条蓮が自分を助けるために大きな犠牲を払ったのなら、申し訳なくてたまらない。それがまさに彼に頼みたくなかった理由だった。
高橋美咲の罪悪感に満ちた表情を見て、九条蓮の胸の中の怒りはさらに燃え上がった。
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