Chapter 174
高橋美咲を潰せ
相沢翔の声は苛立ちを含みながらも慎重に「美咲、もし今もまだ空港で足止めされてるって言ったら、信じる?」と返ってきた。
信じるかどうか——
高橋美咲は口元に作り笑いを浮かべ、思わず相沢翔に食ってかかった。
「相沢翔!本当は助けたくないんでしょ?嫌ならそう言ってよ。私たちの関係だし、責めたりしないから。」
「違うって!美咲、聞いてくれ……」
相沢翔はどうしようもなく困った様子で、焦りもにじませていた。「今回は本当に運が悪いんだ。やっとチェックインしたと思ったら、またフライトが遅延して……」
高橋美咲はもう相沢翔の言い訳を聞きたくなかった。
「もういい、説明は要らない。せめて先に弁護士を雇って保釈してくれない?」と苛立たしげに言った。
その話になると、相沢翔はさらに怒りを募らせた。
歯ぎしりしながら「今、大阪中の弁護士が誰一人俺の依頼を受けてくれない。たぶん九条悠真が手を回したんだ。九条家くらいの力がなきゃ、こんなことできない。じゃなきゃ君のお父さんに頼むしか……」と吐き捨てた。
高橋美咲は相沢翔が高橋正人に頼ろうとしたのを聞いて、慌てて止めた。
「翔、お父さんには言わないで!」
高橋美咲は、高橋家を出た後こんな惨めな姿を高橋正人に見せたくなかった。そんなことになれば、きっと何か理由をつけて自分を家に戻そうとするに決まっている。あの家にはもう戻りたくなかった。
それに、もし高橋夫人に知られたら、絶対に嘲笑される。
絶対にあの人たちに見下されたくなかった。
高橋美咲は拳を握りしめ、「翔、二人で何とかしよう。お父さんには絶対言わないで」と強く言った。
「そんな簡単にはいかないと思うけど……」
高橋美咲はそこまで悲観的ではなかった。「とにかく、できるだけ早くこっちに来て。九条家が動いたとしても、翔ならきっと突破できるって信じてるから!」と相沢翔を励ました。
そして念のため「でも、まずは自分の身を守って。私のせいで巻き込まれないでね」と付け加えた。
「美咲、何言ってるんだよ!俺たちの関係で巻き込まれるとか……」と相沢翔は言いかけて、ふと思い出したように「そうだ。君……君の旦那さんに頼んでみた?」と尋ねた。
相沢翔はさっきまで頭がいっぱいで、高橋美咲にそれを促すのをすっかり忘れていた。
今や九条家に妨害されている以上、頼れるのは九条蓮しかいない。
彼が動けば、九条悠真一人どころか、二人相手でも問題ないはずだ。
なぜか、相沢翔は九条蓮が高橋美咲とただの遊びではない気がしていた。本気で助けてくれるかもしれない、と。
高橋美咲はその言葉に鼻で笑い、「あの人に頼んでも無駄よ。同じ九条蓮って名前でも、本物の九条社長じゃないんだから」と言った。
相沢翔はしばらく沈黙した。
もしかして、本当にあの人が本物の九条社長なのかもしれない——
でも、九条蓮から恩恵を受けている以上、絶対に口外できない。
(高橋美咲って本当に騙されやすいな。あんな男が普通の人なわけないのに……)と心の中で思った。
いつか彼女が真実を知った時、どんな反応をするのだろう。
相沢翔は内心でため息をつき、「冗談じゃなくて、本当に一度頼んでみて。俺よりずっと頼りになるかもしれないし、きっと解決できるかもしれない」と言った。
電話を切った高橋美咲は、重いため息をついた。
もしかしたら九条蓮なら本当に問題を解決できるかもしれない。でも、その方法はきっと本物の九条社長に頼ることだろう。
九条蓮に誰かへ借りを作ってほしくなかったので、やめておくことにした。
冷静に考えれば、これだけ偶然が重なれば、九条悠真が仕組んだ可能性が高い。九条悠真は自分を完全に追い詰めようとしている!
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