Chapter 171
高橋美咲、逮捕される
桜井奈緒と九条悠真は、一体何を企んでいるのだろうか。
……
あっという間に一日が過ぎた。
翌朝、九条蓮が仕事に出かけた後、まだ眠っていた高橋美咲は、突然のインターホンの音で目を覚まし、寝ぼけ眼でベッドから這い出した。
もしかしたら、相沢翔が手配した人たちかもしれない。
ドアを開けた瞬間、制服姿の若い男性二人が立っていて、彼女の前に一枚の紙を差し出した。
「高橋美咲さん、あなたは傷害の容疑で逮捕します。」
その言葉を聞いた瞬間、高橋美咲の眠気は一気に吹き飛んだ。
目を見開く。ついに来たのだ。
これが九条悠真のやり方——本当に人を差し向けて自分を逮捕させるなんて。
一瞬動揺したが、高橋美咲はすぐに気持ちを落ち着けた。無駄な抵抗はしないと決めていた。
自分が着ている半袖のパジャマとショートパンツを見下ろし、落ち着いた声で「ちょっと待って、上着を取ってきます」と言った。
「ご協力お願いします。」
高橋美咲はため息をつき、素直に彼らと一緒に出て行くしかなかった。
軽井沢拘置所。
無人の部屋に、椅子が一つだけ。高橋美咲はそこに座っていた。携帯電話は取り上げられておらず、それだけは優遇措置だった。
今、高橋美咲は相沢翔に助けを求めて電話をかけていた。
コールが二回鳴っただけで、すぐに電話がつながる。
相沢翔が何か言う前に、高橋美咲が先に「翔、私、逮捕された。早く保釈して。それと、頼んでおいた弁護士は雇った?」とまくし立てた。
「行けないんだ……」相沢翔の声には、今まで聞いたことのない無力感がにじんでいた。
「どうして?」
相沢翔は低い声で答える。「車が故障したんだ。」
高橋美咲は眉をひそめ、「車なんて何台もあるでしょ?全部壊れたの?他の交通手段使えばいいじゃない。タクシーでもいいし。」
相沢翔は重いため息をつき、さらに無力な声で自嘲気味に笑った。「そうしたいけど、そのチャンスすらないんだよ。」
高橋美咲「……」
まあ、相沢翔もわざとじゃないのだろう。相沢家で何かあったのかもしれないし、翔が来られないなら弁護士だけでも来てくれればいい。
深呼吸して、落ち着いた声で「じゃあ、まず弁護士だけでも来させて。時間ができたら来て、無理なら来なくていいから」と伝えた。
相沢翔「弁護士もいないんだ……」
その言葉を聞き終わる前に、高橋美咲は事態の深刻さに気づいた。
顔色が曇り、相沢翔の言葉を遮って「相沢翔!冗談じゃないの。本当に拘置所に入れられてるんだから!」と叱りつけた。
「俺だってこんなこと望んでない!」相沢翔は情けない声で叫ぶ。「今日に限って、前世の厄が全部降りかかったみたいなんだよ!朝家を出たら、タイヤが釘でパンクしてて!!」
「それで車を替えたら、そっちもまたパンク!調べたら、誰かが家の前に釘をばら撒いてたんだ。仕方なくタクシー呼ぼうとしたら……」
「でもタクシーも全然捕まらなくて、結局シェア自転車で二十キロ漕いで空港まで行ったら、今度は飛行機に乗り遅れた!」
高橋美咲「……」
「それだけじゃないんだ!」相沢翔は泣きそうな声で続ける。「空港に着いたら今度はパスポートに問題があるって何時間も足止めされて、その後弁護士から電話が来て、足を骨折して来られないから他を探せって……」
相沢翔は愚痴をこぼしながら、ひたすら悪態をつき続けた。本当に気の毒なほどだった。
話を聞き終えた高橋美咲は、思わず口元を引きつらせた。「相沢さん、私をからかってるの?」
普通の人間なら、こんなに多くの偶然に遭遇するはずがない。
不運な出来事がすべて相沢翔に降りかかっていた。まるでロードムービーの災難編みたいだ。
高橋美咲は、相沢翔がわざと自分をからかっているのではないかと、少し疑い始めていた。
こんな状況で、まだ冗談を言う余裕があるなんて!
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