Chapter 168
高橋美咲もまた「高橋家」だった
高橋美咲が不思議そうな顔を向けると、九条蓮はゆっくりと「君と相沢翔はどうやって知り合ったんだ?」とだけ口にした。
本当は、高橋美咲がなぜ自分に助けを求めなかったのか聞きたかったが、それを口にすれば気まずくなる気がして、結局この質問しかできなかった。
高橋美咲は少し目を細め、胸の奥に妙な感覚を覚えた。
なぜ九条蓮も九条凛も、まったく同じことを聞いてくるのだろう?
もちろん相沢翔とは幼い頃からの知り合いだ。ほかにどんな出会い方があるというのか。
もし厳密に言うなら、お腹の中にいる時から、母親同士を通じてすでに出会っていたことになる。
きっと九条蓮が聞きたいのは、自分と相沢翔の子供時代の話なのだろう。
高橋美咲は気持ちを整えてから、「小さい頃から知り合いだったの。途中で家同士の付き合いが途絶えたけど、また再会した時、翔は7歳くらいだった。あの頃は本当に私を甘やかしてくれて……」と話し始めた。
九条蓮の眉がわずかにひそめられる。
自分から高橋美咲と、彼女の心にいる男の話を持ち出してしまい、まるで自分で自分を苦しめているような気分だった。
そして実際にその話を聞いてみると、胸の奥が少しざわついた。
幼なじみというのは、なかなか忘れられないものだ。
だが高橋美咲は九条蓮の表情に気づかず、相沢翔との思い出を楽しそうに語り続ける。「小さい頃はいつも一緒に悪さをしては、父に見つかって叱られてた。でも翔はいつも私のせいにせず、自分が全部悪いってかばってくれたの……」
高橋美咲が父親の話をするのは、珍しいことだった。
これまで彼女の口から父親の話が出たのは、今回が初めてかもしれない。ただ、その父親の話も相沢翔と結びついている。あの男はずっと前から高橋美咲の父親とも面識があり、きっと認められていたのだろう。
九条蓮の胸には複雑な思いが渦巻いた。
その時、高橋美咲は何かを思い出したようで、ふと目に影が差し、表情が沈んだ。
九条蓮は我に返り、「どうした?」と声をかけた。
高橋美咲はぎこちなく微笑み、首を振った。「なんでもない。ただ、子供の頃のことを思い出して、ちょっと後悔と寂しさがこみ上げてきただけ。父が再婚してからは、あんな日々は二度となかったから」
さっきまで夢中で話していたが、気づけばあの頃の思い出は今も心に残っていて、決して忘れていなかった。
「お父さん、再婚したの?」
高橋美咲はずっと自分の素性を明かすことを避けてきたが、九条蓮の前では隠す必要がないような気がした。
その感覚はとても不思議で、彼には心から信頼できる何かがあるように思えた。
高橋美咲は九条蓮を見つめて微笑む。「私、父と母のこと、あなたに話したことなかったよね?」
「ないよ」
「聞きたい?」と高橋美咲は少し戸惑いながら尋ねた。
他人の家の事情なんて興味がない人もいる。自分の家庭の話が九条蓮にとってもそうなのか、念のため確認したかった。
九条蓮は眉を上げて「聞きたい」と答えた。
自分のことを知ろうとしてくれるその言葉に、高橋美咲の口元が自然とほころぶ。
彼女はゆっくりと語り始めた。「私の両親は、私が小さい頃に離婚したの。その後、母は交通事故に遭って……まさか父が一方的に離婚して、すぐに別の女性と家庭を作っていたなんて思いもしなかった。しかも義妹は私より半年しか年下じゃないの。私は家を追い出されて、行き場のない可哀想な子になった……」
九条蓮は目を伏せ、考え込んだ。
なぜかこの話に聞き覚えがある。
大阪の高橋家が、かつてまさにそんなスキャンダルを起こし、当時は大騒ぎになったと聞いた。その後、金の力で揉み消された。
その事件以来、九条家は高橋家と一切関わりを持たなくなった。
九条蓮は、あの時の九条家の大旦那様が高橋家の家風を嫌って距離を置いたのだと思っていた。
高橋美咲の名字も高橋だ。まさか高橋家と何か関係が?
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