Chapter 167
遠くまで助けを求めて
九条蓮は鼻梁をつまんだ。
高橋美咲が最初に頼ったのが自分ではなく、彼女の心の中の“白い月光”だったことに、彼は驚きを隠せなかった。どうやら高橋美咲にとって、その“白い月光”は自分以上に大切な存在らしい。
九条蓮は、高橋美咲が他の男に助けを求めるのをこれ以上聞く気にはなれなかった。
彼はソファに戻り、腰を下ろした。
そのとき、携帯が鳴った。画面を見ると、九条凛からのメッセージだった。
彼はスマホを開き、九条凛のメッセージを確認した。
「お兄ちゃん、美咲があの小悪魔・桜井奈緒と真っ向勝負して、桜井奈緒を突き飛ばして流産させたって聞いたよ!美咲、やるじゃん!あんなに強く押すなんて思わなかった。絶対、あの小悪魔が先にケンカ売ったんでしょ、美咲は悪くないよ!」
九条凛は親友の肩を持つばかりで、自分が間違っているとは少しも思っていなかった。
九条蓮は少し眉をひそめ、長く整った指でスマホを操作し、「彼女は押していない」と返信した。
「え、マジ!?じゃあ美咲は桜井奈緒にハメられたってこと?ありえない、私が絶対に仕返ししてやる!こんな濡れ衣、絶対に許せない!」
九条蓮は、今まさに部屋にいる高橋美咲のことを思い浮かべ、口元に皮肉な笑みを浮かべた。「心配しなくていい。もう誰かに助けを頼んでいる。」
九条凛:「誰かに?誰に頼んだの?まさか、あの“白い月光”の人?」
九条蓮:「ああ。」
その瞬間、九条凛は言葉を失った。兄という巨大な後ろ盾を頼るどころか、美咲はわざわざ遠くまで助っ人を呼びに行ったのだ。
そして、高橋美咲が九条蓮の正体を知らないことを思い出し、胸の高鳴りも少し落ち着いた。
「お兄ちゃん、どうするつもり?本当にあの男が美咲に近づくのを黙って見てるの?今までのお兄ちゃんの努力、全部無駄になっちゃうよ?美咲がその気になったら、あの人に飛びついちゃうかも!」
「飛びつく」という言葉を聞いた瞬間、九条蓮の表情は険しくなり、冷たい空気が一気に広がった。
これだけ高橋美咲のために尽くしてきたのに、彼女が自分に飛びつく姿は一度も見たことがない。
きっと自分が高橋美咲の心の中の人間じゃないから、彼女は自分に飛びつかないのだろう。
もし相手が他の誰かだったら、結果は違ったのだろうか。
九条蓮は、理由もなく苛立ちを覚えた。
そのとき、高橋美咲が電話を終えて戻ってきた。彼女の顔には安堵の色が浮かんでいた。
さっき、相沢翔に弁護士を探してほしいと頼んだばかりだった。もし九条悠真が本気で桜井奈緒のためにこの件を追及するつもりなら、きっと自分も向き合わなければならない。自分一人ではどうにもできない問題だ。
もちろん、九条凛に頼ることもできた。
でも、これまで何度も自分のことで九条凛に迷惑をかけてきたから、もうこれ以上は頼みづらかった。だから相沢翔に頼るしかなかった。家族でもあるし、変に遠慮する必要もない。
高橋美咲が部屋から出ると、九条蓮がソファにもたれ、半分目を伏せていた。何を考えているのか分からないが、どこか不機嫌そうな表情だった。
気になった高橋美咲は、彼の隣に座った。
九条蓮は目を上げて彼女を一瞥し、何気なく尋ねた。「助けを呼んだのか?」
高橋美咲は少し戸惑ったが、うなずいた。
「今日のこと、あなたも見てたでしょ。九条悠真たちは絶対にこのままじゃ済まさない。だから、念のために準備しておきたかったの。」
九条蓮の表情は冷たくなった。
“白い月光”の力は信じるのに、自分のことは信じてくれないのか?なぜわざわざ遠くの人に頼る?
九条蓮の目がわずかに陰り、「一つ聞いてもいいか?」と尋ねた。
「何?」と高橋美咲は驚いたように彼を見た。
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