Chapter 162
すべては誤解だった(続き2)
九条蓮は目を伏せて写真を見て、少し眉をひそめた。
高橋美咲は東京を離れると言っていた。
彼女を引き留める方法は、本当にないのだろうか。
考え込んでいると、真壁直人の声が耳元で響いた。「社長、高橋グループとのジュエリーブランドの立ち上げ、もう準備できています。」
九条蓮は真壁直人を見た。「ジュエリーブランド?」
九条蓮の表情を見て、真壁直人は頭をかきながら言った。「はい。前にご報告した件で、その時に全部任せてくれって言われたので。」
それを聞いて、九条蓮は少し眉を寄せた。
確かに、そんな話があった気がする。
当時は高橋美咲のことで頭がいっぱいで、細かいことは真壁直人に一任していたのだ。
九条蓮は尋ねた。「デザイナーの募集は?」
「はい。これから世界中から優秀なジュエリーデザイナーを集める予定ですし、高橋家も協力してくれます。」
その言葉に、九条蓮の口元がゆっくりとほころんだ。
もしかしたら、これで高橋美咲を東京に引き留められるかもしれない。
…
桜井奈緒は九条インターナショナルのジュエリーブランドのマネージャーに昇進し、自分のオフィスを持つようになった。
今、彼女はオフィスに座っていた。
アシスタントの陽子がドアを開けて入ってきて、「桜井マネージャー、下で頼まれていた件、見てきました。写真もたくさん撮ってきました」と言った。
そう言って、彼女はスマホを取り出した。
桜井奈緒は高橋美咲の巨大な壁画の周りに人だかりができている写真を見て、顔色を曇らせた。
その時、陽子はまだ話し続けていた。「桜井マネージャー、みんな高橋美咲さんの壁画をすごく綺麗だって褒めてました。写真もSNSにたくさん上がってて、コメントも多かったです。」
桜井奈緒の目が冷たくなった。
陽子はため息をつき、「私も本当に上手だと思いました。今ちょうどデザイナーを募集してるので、声をかけてみては—」
思いがけず、言い終わる前に桜井奈緒が分厚い木製デスクをバンッと叩いた。「声をかける?うちに来る前に私のこと調べなかったの?高橋美咲と私は犬猿の仲よ!」
この新人アシスタントは、桜井奈緒と高橋美咲の確執を知らず、さっきは何気なく褒めてしまっただけだった。
まさかこんなに怒らせるとは思わず、すぐに機転を利かせて言い直した。「すみません、桜井マネージャー。気にしないでください。高橋美咲の絵なんて大したことないです。みんな目が節穴ですよ。」
その言葉を聞いて、桜井奈緒の表情は少し和らいだ。
だが、彼女の目の奥の陰りは消えなかった。高橋美咲が注目を集めるのがどうしても許せなかった。
しかも、九条悠真がまだ高橋美咲に未練があるのは明らかだ。彼女を近くに置いておくなんて、チャンスを与えるようなもの。
九条悠真と高橋美咲のやりとりを思い出すと、どうしても納得できなかった。
お腹の方もまだ音沙汰がない。もし妊娠できれば、もう一つ武器が増えるのに。
ふと、桜井奈緒は何かを思いついたように動きを止めた。
計算高い光がその瞳に浮かび、ゆっくりと口元に笑みを浮かべた。
もしかしたら、高橋美咲をどうにかできる方法が分かったかもしれない!
桜井奈緒は席を立ち、何気ないふりで言った。「こんなに綺麗な壁画なら、私もちゃんと見に行かないとね。」
そう言って、ハイヒールを鳴らしながら外へと歩いていった。],
title":"すべては誤解だった"}
九条インターナショナルのビルの一階では、皆が高橋美咲の絵画を賞賛していた。
桜井奈緒がゆっくりと歩み寄ってきた。高橋美咲が後ろの方に立っているのを見つけると、口元に軽く笑みを浮かべて近づいてきた。
「美咲、あなたの絵の腕前、どんどん上達してるのね。」
You might also like




