Chapter 158
狙われている気がする(続き)
そんなの絶対に嫌だ!何とかしてこの状況を打開しなければ。
その夜の夕食時、美咲はご飯をつつきながらぼんやりしていて、明らかに食欲もなかった。
九条蓮はそんな美咲を横目で見て、心配そうに「どうした?何かあったのか?」と声をかけた。
美咲は「壁画がもうすぐ完成するんですけど、今日真壁さんがずっと難癖をつけてきて、わざとやってる気がするんです」と答えた。
九条蓮はうなずいた。
少し考えてから、何気なく「もしかしたら本当に壁画に問題があったんじゃないか?」と言った。
「そんなはずありません!下絵通りに描いてますし、最初は本当に問題があるのかと思って言われた通りに直しましたけど、だんだん言うことが無茶苦茶になってきて。色が違うとか、形が違うとか…」
美咲は憤慨した表情で、思い返すほど納得がいかなかった。
そのうち、上からの指示なのではと疑い始めた。真壁直人の上司といえば、あの九条社長だ。
まさか、とは思うけど。
でもあの日の九条社長は話しやすそうだったし、そんな人には見えなかった。
美咲の愚痴を聞きながら、九条蓮の目が一瞬揺れた。
平然と「じゃあ、真壁の言う通りに直せば問題ないんじゃないか?」と返した。
「そんなわけないです!」美咲は興奮気味に言った。「明日もまた見に来るって言ってましたし、絶対また変なこと言い出しますよ…」
そう言ってから、九条蓮を見つめて「こういう時、どう対処したらいいと思いますか?」と尋ねた。
「…」美咲の真剣な視線に、九条蓮は小さく咳払いして「じゃあ、修正指示は書面でサインしてもらったらどうだ?」と提案した。
「それだ!なんで気づかなかったんだろう!」美咲の顔から不安が消え、ぱっと明るい笑顔になった。
そんな美咲の嬉しそうな様子を見て、九条蓮は全く嬉しくなかった。
そもそも美咲をもう少し長く東京に引き留めたくて、真壁直人にあれこれ言わせていたのに、結局美咲の問題を解決したのも自分だった。
問題がきれいに片付いたことで、美咲はようやく食欲が戻り、
気を利かせて九条蓮に料理を取り分け、「もっと食べてくださいね」と声をかけた。
翌日。
九条蓮のアドバイスを受けた美咲は、しっかりと準備を整えた。真壁直人がやって来たときには、明るく元気に挨拶までした。
「真壁さん、いらっしゃったんですね。」
真壁直人は高橋美咲を訝しげに見つめた。
昨日まであんなに落ち込んでいた高橋美咲が、今日はどうしてこんなに自信満々なのか。何かあったのか?
しばらくして、真壁直人は顔を上げて壁画を眺めるふりをしながら、さりげなく自分の意見を述べ始めた。
高橋美咲は静かに耳を傾け、真壁直人が話し終えるのを待ってから、にっこりと微笑み、紙とペンを取り出して、彼が言ったことを一言一句漏らさず書き留めていった。
すべて書き終えると、高橋美咲は顔を上げて真壁直人に尋ねた。「真壁さん、他にご要望はありますか?ここに全部まとめて書いておきますね。」
「……」
「問題がなければ、ここにサインをお願いします。」
そう言って、高橋美咲は手に持った紙を真壁直人に差し出した。
真壁直人は目を見開き、高橋美咲が差し出した紙を呆然と見つめ、しばらく反応できなかった。まさかこんなことをされるとは思ってもみなかったのだ。
サイン?
つまり、今この場で全部の問題点を挙げておかないと、あとからはもう何も言えなくなるということか?
真壁直人は思わず血を吐きそうになった。
その様子を見て、高橋美咲は気遣うように「真壁さん、まだ何かご質問は?」と尋ねた。
「い、いえ、ありません。」真壁直人は引きつった笑顔を浮かべた。
結局、彼はサインするしかなかった。
「ご協力ありがとうございます、真壁さん。」高橋美咲は上機嫌で紙とペンをしまい、再び壁画の作業に取りかかった。
You might also like




