Chapter 150
破格の要求
和田琉生は高橋正人の指示でやって来ていた。相沢翔が「高橋美咲さんは今は元気だから心配いらない」と言っても、高橋正人はどうしても安心できなかった。やはり娘のために何か手助けをしなければと思い、和田琉生を送り込んだのだった。
「あ、あなた……どうしてここに?」桜井奈緒はすぐに気持ちを落ち着け、できるだけ平静を装って尋ねた。
その瞬間、彼女の頭の中には無数の考えがよぎった。
自分の正体がバレたのか?
高橋家が自分を暴くために来たのか?
だがすぐにその考えを打ち消した。もし高橋家が本当に自分を暴くつもりなら、こんな静かに済むはずがない。すでに大騒ぎになっているはずだ。
和田琉生は部屋に入ってきた。彼は桜井奈緒を心配そうに見つめて、「お嬢様、先ほど外にたくさんの記者がいましたが、何かあったのですか?お手伝いしましょうか?」と声をかけた。
お手伝い?
桜井奈緒は、まるで天から幸運が降ってきたような気分だった。
さっき九条悠真に「自分で解決しろ」と言われ、どうしたものかと悩んでいたところだった。まさかこのタイミングで高橋家の執事が現れるとは思ってもみなかった。
最初に高橋家の一員を装い始めた頃、桜井奈緒はまだ多少の恐怖と不安を感じていた。だが何度かうまく切り抜けてきたことで、正体がバレることもなく、その野心はますます膨らんでいった。
今や、もっと多くを手に入れたいと強く思っていた。
そして、和田琉生なら自分の要求を叶えてくれると確信していた。
桜井奈緒は口元に薄い笑みを浮かべ、探るように言った。「あなたの名前、和田琉生さんだったわよね?」
和田琉生は胸の前で手を組み、真剣な表情で答えた。「はい、お嬢様。私は現在の高橋家の執事、和田琉生でございます。」
「最近、高橋様はお忙しいので、私が代わりにお手伝いできることがないか伺いに参りました。できる限り最大限のサポートをさせていただきます。」
桜井奈緒は、なぜ和田琉生が自分を高橋家の長女と勘違いしているのか分からなかったが、これは自分にとって好都合だった。高橋家の力を利用して、目的を果たせるのだ。
桜井奈緒はにっこりと微笑み、「外の記者たちを全部どうにかしてほしいの。それから、婚約パーティーの件も、もう一切ニュースに出ないようにして」と頼んだ。
「かしこまりました、お嬢様。」和田琉生はうなずいた。
彼は携帯電話を取り出し、番号を押して通話を始めた。何を話しているのか桜井奈緒には分からなかったが、和田琉生は淡々と指示を出していた。
約30分後、和田琉生の携帯が鳴った。
彼は画面をスワイプして通話に出る。「うん、分かった。」
通話を終えると、和田琉生は桜井奈緒に向かって「お嬢様、ご依頼の件はすべて対応いたしました。今後、あなたに関するネガティブなニュースは一切出ません」と報告した。
桜井奈緒は目を見開いて驚いた。
すぐに自分のスマホを取り出して検索してみると、確かに婚約パーティーに関する悪い噂は一切見当たらなかった。
さすが高橋家、その対応の速さには舌を巻く。たった30分で、あれほど頭を悩ませていた問題を片付けてしまったのだ。
桜井奈緒の目がきらりと光り、記者対応だけでは物足りなくなってきた。もっと大きな利益を得なければ、と考え始める。
高橋家の力を使って、九条インターナショナルに戻ることはできないだろうか?
もし高橋家の後ろ盾を得られれば、九条インターナショナルでも確実に地位を築けるはずだ。
桜井奈緒は和田琉生を見つめ、「もう一つお願いがあるの」と切り出した。
その目には野心が隠しきれずに光り、「高橋家と九条インターナショナルの業務提携契約がほしいの。しかも、その責任者は私一人にして」とゆっくりと言った。
You might also like




