Chapter 143
九条社長を落とせ!
そのわずかな間に、九条凛の頭の中では無数の可能性が駆け巡った。もしかしたら九条蓮が誰かに成りすまさせたのかもしれないし、うまくごまかしたのかもしれないし……
いずれにせよ、結論は九条蓮がバレていないということだった。
九条凛が張り詰めていた気持ちは一気に緩んだ。
二人はすぐに本題に戻り、九条凛は言った。「この件はとっくに処理済みだったから、漏れるはずがないのに。さっき記者の友達から連絡があって、それで桜井奈緒がこっそり情報を流したって知ったの……」
「桜井奈緒?」
大した意外性はなかったが、高橋美咲は桜井奈緒がなぜ急にこの件を暴露したのか少し気になった。
「うん。どこから知ったのかは分からないけど、美咲があの人の婚約パーティーで騒ぎを起こしたから、今度は仕返しに暴露したいんだと思う。」
高橋美咲は冷たく口元を歪めた。桜井奈緒は、すでに自分が九条社長にきちんと説明し、許しも得ていることなど知らないのだろう。だから暴露しても無駄なのだ。
少し考えてから、「桜井奈緒はこれで終わるつもりはないと思う。今後の動きを見張っててくれる?」と言った。
「分かった。」と九条凛は答えた。
……
その頃、月島瑠奈は他の九条インターナショナルの社員たちの後をつけて社屋に入っていた。
桜井奈緒は望月麗奈を探して一緒に動画を届けに行けと言っていた。
こんな絶好のチャンス、他人に譲るはずがない。自分でやるに決まっている!
うまくいけば九条インターナショナルに復帰できるし、もし運良く九条社長の目に留まれば、一気に玉の輿も夢じゃない。
九条社長はとびきりのイケメンで将来有望、しかもまだ彼女がいないと聞いている。
月島瑠奈は、膝上丈の超ミニタイトスカートに、下着の柄が透けるほどのフィットした白いブラウスをわざと選んで着てきた。
一見ビジネススタイルだが、細部に小技を効かせている。このチャンスを逃さず、絶対に九条社長を落とすつもりだ。
月島瑠奈は以前九条インターナショナルの社員だったため、受付も解雇の連絡を受けておらず、見知った顔だと止めなかった。
何事もなく進めたことに、月島瑠奈は内心ほくそ笑んだ。
そのままエレベーターで最上階へ直行!
だが、エレベーターを降りた瞬間、真壁直人に呼び止められた。
月島瑠奈は真壁直人を見て、慌てて言った。「真壁さん、九条社長にどうしてもお伝えしたい大事な話があるんです。取り次いでいただけませんか?」
真壁直人は、目の前で色目を使う女を見て、顔を険しくした。
大事な話などではない。明らかに九条蓮を誘惑しに来たのだ。こんな女は一日に十人は相手にしてきたので、もう慣れっこだ。
こうした小手先の色仕掛けなど、一目で見抜ける。
そもそも普通は最上階まで来られず、九条インターナショナルの入口で止められるものだ。
真壁直人は鼻で笑った。「九条社長に会いたいからって、誰でも会えると思うなよ。」
そう言うとすぐに警備員を呼び、月島瑠奈を追い出すよう指示した。
月島瑠奈は、順調に九条社長に会い、色仕掛けで九条蓮を虜にするつもりだったのに、まさかこんな形で追い出されるとは思ってもみなかった。
警備員に引きずられながら、必死にもがいた。
「真壁さん、本当に九条社長に伝えたい急用なんです!九条社長が騙されてるんです!」
「誰かが九条社長になりすまして、名前を使って詐欺を働いてるんです……」
それでも、まるで死んだ犬のように引きずり出された。
月島瑠奈は九条インターナショナルの玄関から放り出され、カエルのように地面に転がり、膝の皮は剥け、髪もぐちゃぐちゃになった。
結局どうしようもなく、桜井奈緒に電話して、失敗したことを情けなく報告するしかなかった。
病院にて。
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