Chapter 142
九条社長を続けさせて
気づけば、いつの間にか偽社長という新たな役割を背負わされていて、嬉しいのか困るべきか分からない……。
九条蓮は真壁直人に目を向け、「下にいた記者たちの所属会社に警告を入れろ。それから、情報を流したやつも調べろ。」と指示した。
あの状況は明らかに計画的だった。偶然ではありえない。
あの婚約披露宴の後、すでに万全の手を打っていたはずなのに、今になって露見した。他に理由はなく、誰かが意図的に仕組んだとしか考えられない。
「かしこまりました、九条社長。」
…
病院にて。
桜井奈緒は、高橋美咲が九条社長に恥をかかされるのを待っていたが、逆に悪い知らせを受け取った。
なんと、九条社長の秘書である真壁直人が自ら現れて、九条インターナショナルの入口にいた記者たちを全員追い払ったというのだ!
彼女は思わず身を起こし、信じられない思いでいっぱいだった。
九条蓮は怒るどころか、記者たちを追い払った?本当なの?
桜井奈緒は、九条蓮の立場なら記者たちも逆らえないことを知っている。
情報を流したのは、本物の九条社長にこの件を知らしめ、高橋美咲が誰かに成りすましを頼んだことを突き止めてもらうためだった。
まさか、こんな結果になるとは思ってもみなかった!
九条蓮が高橋美咲を庇うはずがない。もしかして、ただの噂話だと思って記者を追い払ったのだろうか?
桜井奈緒はすぐに自分を納得させる理由を見つけ、九条蓮が追及しなかったのは、誰かが騙そうとしていると誤解したからだと結論づけた。
自分の婚約披露宴はすべて録画されており、高橋美咲が偽物を連れて現れた一部始終も記録されている。だから、その映像を九条社長に届けさえすれば……。
今は自分が直接動くわけにはいかない。誰に頼むのが一番いい?
すぐに、桜井奈緒の目に鋭い光が宿る。
誰に頼むか、思いついたのだ。
桜井奈緒は携帯を取り出し、ある番号に電話をかけた。繋がると、すぐにこう言った。「もしもし、月島瑠奈?あなたと森岡千紗で、私の婚約披露宴に高橋美咲が現れた時の録画を九条社長に届けて、高橋美咲が誰かに九条社長の成りすましを頼んだことを暴露して。」
「そうよ!できるだけ早く。ちゃんとやってくれたら、九条インターナショナルに戻れるようにしてあげる。」
通話を切った後、桜井奈緒はほくそ笑んだ。
彼女たちを助けるつもりなんてない。ただ、少し餌をぶら下げて、思い通りに動かそうとしているだけだった。
帰宅途中、高橋美咲は九条凛から電話を受けた。
通話が繋がるや否や、九条凛は不満げに言った。「美咲、九条インターナショナルのビルの前で、暇な記者たちが人を待ち伏せしてたって聞いたけど?」
高橋美咲はまったく動じず、にこやかに答えた。「凛、心配しなくて大丈夫。もう全部片付いたから。」
「えっ?」九条凛は驚いて言った。「片付いたって?どうやって?」
九条凛は、きっと兄が手を貸したに違いないと疑った。でなければ、こんなに早く解決するはずがない。
「さっき九条インターナショナルに行って、九条社長に会ってきたの。」
九条凛は息を呑み、心臓が止まりそうになった。
おそるおそる尋ねた。「それで……兄に会ったの?」
「会ったよ。」高橋美咲はため息混じりに言った。「まさかあんなに話しやすい人だとは思わなかった。身代わりを立てたことも責められなかったし、むしろきちんと対応すると言ってくれたの。」
「えっ?」九条凛の声は衝撃に満ちていた。
兄がバレたと思っていたのに、高橋美咲の話を聞けば聞くほど、何か違和感があった。本当に兄のことを言っているのだろうか?
「本当に兄に会ったの?」
「うん。」高橋美咲は続けた。「会っただけじゃなくて、結構いろいろ話したよ。」
「……」
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