Chapter 141
九条社長に謝罪しに来ました(続き)
だが水城も空気を読んで演技を続けた。軽く咳払いして「君たちの件は……もう把握している……」と口を開いた。
すかさず真壁が横から「先ほど九条社長のご指示で、私が下に降りて記者たちを全員追い払いました。高橋さん、ご心配なく」と付け加えた。
高橋美咲はこんなにあっさり解決するとは思わず、九条社長も自分を責める様子はなかった。
彼女は笑顔で「さすが凛さんのお兄さんですね、九条社長って本当に素敵な方です!」と褒めた。
水城は引きつった笑顔を無理やり作り、顔が固まってしまいそうだった。
これは拷問だ。あとどれくらい演じ続ければいいんだ?
足をぎゅっと閉じて、表情も引きつり歪んでいる。
もう限界だ!
その時、真壁が水城に目配せし、高橋美咲を早く帰すよう促した。
水城はすぐに察し、咳払いして九条蓮を指さし「もう大丈夫だから、高橋さんはお帰りください。君、今すぐ高橋さんを下まで送っていけ」と命じた。
九条蓮は「行こう。俺が送る」と高橋美咲に言った。
高橋美咲はまだ夢を見ているような気分だった。
まさかこんなにあっさり解決するなんて。
あまりにもスムーズすぎて、今すぐ宝くじでも買いに行きたい気分だった。
九条蓮と一緒にエレベーターで下に降りると、案の定、記者たちはすっかりいなくなっていた。
高橋美咲の胸のつかえはようやく完全に下りた。
だが何かを思い出したのか、また眉をひそめ、小さな顔に困った表情を浮かべた。
「どうした?」と九条蓮が尋ねた。
「今回は記者たちは帰ったけど、婚約パーティーのことがバレたらどうしよう?あなたが偽物だって知られたら、笑いものにされちゃうかも。」
高橋美咲は今になって、自分があまりにも浅はかだったと気づいた。ただ相手をギャフンと言わせたかっただけで、その後始末まで考えていなかった。今や穴だらけで、修復しなければならないことが山積みだ。
しかも、まだしばらく東京に滞在しなければならない。
「バレないよ。」
「えっ?本当に?」と高橋美咲は半信半疑で聞いた。
九条蓮は真剣な顔で「さっき九条社長が手を打ってくれた。誰も暴露なんてできない」と言った。
「よかった!九条社長って本当にいい人だね!」
高橋美咲は、さっき自分が褒めた相手は間違っていなかったと感じていた。九条社長は本当に、なかなかいい人だ。
九条蓮の顔色がさっと曇る。
高橋美咲は彼を褒めているものの、今の彼女の目には水城圭介が九条社長に映っている。つまり、褒められているのは水城圭介……。
高橋美咲は誰かの不機嫌な表情に気づかず、上機嫌で手を振った。「じゃあ、私は先に戻るね。」
九条蓮は「気をつけて帰って」と声をかける。
「うん、お仕事頑張ってね。」高橋美咲はにっこり笑い、そう言って背を向けて去っていった。
高橋美咲を見送った後、九条蓮はすぐにプライベートエレベーターの暗証番号を変更し、再び上階へ戻った。
水城圭介と真壁直人がエレベーター前で彼を待っていた。九条蓮が戻ると、すぐに「九条社長、高橋さんはお帰りになりましたか?」と尋ねる。
「ああ。」
その返事を聞いて、水城圭介は大きく安堵の息をついた。とりあえず、事態を台無しにせずに済んだ。
だが、ふと九条蓮が冷たい視線で自分を見つめていることに気づき、その目つきに思わず身が引き締まる。
もしかして、九条社長はさっきのことを根に持っているのか?
「き、九条社長?」
「今後また彼女が来たら、お前が九条社長を続けろ。」
水城圭介は完全に呆然とした。聞き間違いだろうか?
九条社長を続けろって?
You might also like




