Chapter 140
九条社長に謝罪しに来ました
「立て、急げ、俺と一緒に九条社長のオフィスに来い。」
「何の用だよ?おい……離せ!せめてケツ拭かせろ!」
前に高橋美咲が九条蓮と水城圭介を一緒に見かけたとき、水城圭介を九条社長と勘違いし、その話を真壁直人が聞いて大笑いしていた。
まさかこんなに早く水城が役に立つとは思わなかった。
高橋美咲は少し迷いながら「九条蓮、あなた……」と口にしかけた。
その時、オフィスのドアが開いた。
振り返ると、水城圭介と真壁直人が一緒に入ってきた。水城は腹をくくって「俺の席に座って何してんだ?死にたいのか?俺の座を奪う気か?」と叫んだ。
九条蓮は、さっきもう少しで自分が誰かを明かしそうになったが、高橋美咲が激怒してまた“白月光”の元に戻ってしまうかもしれないと思い、ぐっと堪えた。
まさか水城がタイミングよく助け舟を出してくれるとは思わず、すぐに役になりきって立ち上がり、恭しく脇に避けた。
「九条社長、申し訳ありません。」
水城はそのまま九条蓮が座っていた椅子にドカッと腰を下ろした。
高橋美咲は信じられない思いで水城を見つめた。その姿が、彼女の記憶の中のぼんやりしたシルエットと重なった。
やっぱりそうだ——九条蓮がわざわざ変装して自分をからかうなんて、そんな暇な人じゃない。考えれば考えるほど、あり得ない気がしてきた。
そう、これが九条社長だ。
前に「ブサイク」なんて言ってしまったけど、やっぱり九条蓮の存在感には到底及ばない。
九条蓮は高橋美咲のそばに歩み寄った。「何しに来た?どうやってここまで上がってきた?」
九条インターナショナルの受付はしっかりしているはずだ。そんな初歩的なミスはしないし、アポなしの部外者を上に上げることもない。
「地下駐車場から上がってきたの。」
「エレベーターの暗証番号、知ってたのか?」
九条蓮は、もしかして設定が簡単すぎたのかと疑い始めた。だから簡単に突破されたのか。
「あなたの誕生日を試したの。暗証番号、あなたが設定したんでしょ?」
「……」
確かに自分が設定したが、高橋美咲がそんな突飛な発想をするとは思わなかった。一瞬、言葉が出なかった。
暗証番号は変えなければ。次は顔認証にしよう。
「大変なことになってるの知ってる?」高橋美咲は心配そうな顔で言った。「婚約パーティーの件を記者に嗅ぎつけられて、ここまで来てるの。九条社長に謝りに来たの。」
そう言いながら、高橋美咲は心から謝罪しなければと思い、水城に真剣な眼差しを向けた。
「九条社長、全部私のせいです。ご迷惑をおかけしていたら、できる限り影響を抑えるよう努力します。絶対にご迷惑はおかけしませんので、どうかご容赦ください。」
そう言い終えると、高橋美咲は水城に深々と頭を下げた。
その態度は本当に誠実で真剣だった。
そっと隣の九条蓮を見やると、彼は棒立ちのまま動かない。すぐに彼の腕を引っ張った。
何ボーッとしてるの?早く一緒に謝ってよ!
このままじゃクビになるかもしれないでしょ?
彼女のためとはいえ、九条蓮も主犯格なのだから謝るべきだし、夫婦なんだから苦楽を共にしなきゃ。
だが九条蓮は全く意図を汲んでくれず、相変わらず無表情で動こうとしない。
仕方なく高橋美咲は体を起こし、彼の後頭部を押さえて一緒に水城に頭を下げさせた。
九条蓮は眉をひそめ、体を強張らせた。
彼は生まれながらの御曹司で、九条会長以外に頭を下げたことなどなかった。
椅子に座る水城は、目の前で二人がまるで天地を拝むように頭を下げているのを見て、思わず漏らしそうになった。
机の下ではすでに足が震えている。
まさかこの人生で九条社長に頭を下げさせる日が来るとは。現実離れしすぎている!
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