Chapter 138
九条社長に直接謝罪を
高橋美咲の心は一気に沈み込んだ。
これだけ大騒ぎになっていれば、九条社長が知らないはずがない。もうすべて把握しているに違いない。
記者が自分の電話番号まで突き止めたのだから、顔ももう晒されているだろう。正面から入ったら、記者たちに食い物にされてしまう。
そこで高橋美咲は運転手に頼み、九条インターナショナルの裏口まで回ってもらった。
……
その頃、桜井奈緒は病院のベッドに寝転び、満足げな表情でスマホのライブ配信を眺めていた。
九条悠真は事態を丸く収めようとしたが、彼女はそれを受け入れなかった。
そこで記者に接触し、九条社長の突然の結婚話をリークしたのだ。今や記者たちはその情報を嗅ぎつけ、九条インターナショナルのビルの下に殺到している。
これでもまだ本物の九条社長が出てこないはずがない。いざとなれば、彼がみんなの前で高橋美咲との関係を否定し、「高橋美咲なんて知らない」と言い切れば、高橋美咲の評判は完全に地に落ちる。
最後に、手元にある録音を公開すれば、婚約パーティーで起きたことはすべて高橋美咲のせいにできる。
結局、嫉妬に狂った元カノなら、どんな酷いことだってやりかねない。
桜井奈緒の口元がゆっくりと吊り上がる。
あとは、すべてが明るみに出るのを待つだけだ。
……
九条インターナショナル社長室。
九条蓮は本革のソファに腰掛けていた。地味な無地のシャツを着ているが、こめかみまできっちり整えられた髪と、周囲の雰囲気が相まって、控えめながらも権力者らしい気品を漂わせている。
突然、ドアがノックされ、真壁直人が慌ただしく入ってきた。
「九条社長、外に記者が大勢詰めかけております。高橋さんの件も知っていて、社長のご結婚について非常に関心を持っているようです」
その言葉に、九条蓮の表情が一気に険しくなった。
記者どもは本当に図々しい。九条インターナショナルの玄関を塞いで、よくも自分の私事を聞きに来たものだ。
「追い払え。」
「はい、すぐに対応いたします。」真壁直人は深く頷き、恭しく部屋を出ていった。
九条インターナショナルの地下駐車場。
高橋美咲は裏口から降りた。この場所には記者たちの姿はなく、誰にも見つからずに素早く駐車場へ入った。
指定された駐車スペースに見覚えのある高級車が停まっているのを見て、今日九条社長が九条インターナショナルにいることをさらに確信した。
九条インターナショナルの駐車場には、最上階へ直通する専用エレベーターがある。利用にはカードキーか暗証番号が必要だ。
高橋美咲はエレベーターの前で、落ち着かずにその場をぐるぐる歩き回った。
どうしよう?
九条インターナショナルに入れなければ、九条社長に会うこともできない。
ふと、美咲の視線がエレベーター横のテンキーに止まり、「とりあえず何か試してみようかな」と思った。
少し考えてから、適当に数字を入力してみた。
やはり、暗証番号が違うと表示された。
続けて何度か試した——自分の誕生日や九条凛の誕生日など——しかしどれもダメだった!
他にどんな数字の組み合わせがあるだろう?
最後に、婚姻届受理証明書に記載されていた情報を思い出した。九条蓮の誕生日!まだそれは試していなかった。
ダメ元で入力してみると、なんとエレベーターが「ピンポーン」と鳴ってドアが開いた!
えっ……合ってたの?!!
高橋美咲は信じられずに自分の太ももをつねった。痛っ……夢じゃない。本当に正解だった。
あれこれ考える余裕もなく、エレベーターに乗り込み最上階のボタンを押した。
エレベーターが最上階で止まる。高橋美咲は周囲を見回し、緊張しながら一歩踏み出した。
九条インターナショナルに足を踏み入れるのは初めてで、それもあの九条社長の本拠地だ。
この先に何が待っているのか分からず、極度に緊張した。
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