Chapter 137
桜井奈緒の策略(続き)
あまりにも熟睡していて、彼が出ていくのにも気づかなかったなんて思いもしなかった。
スマホはまるで命を狙うかのように鳴り続けている。高橋美咲は我に返り、画面をスワイプして応答した。次の瞬間、聞き覚えのない声が電話口から響いた——
「高橋さん、私はグローバルファイナンスの記者です。本当に九条夫人なんですか?ぜひ独占インタビューをお願いしたいのですが」
その瞬間、高橋美咲は一気に目が覚めた。
「ノーコメントです。」
そう言って電話を切った。だが切った途端、また知らない番号から次々と着信が。「高橋さん、九条社長とのご関係について……」
高橋美咲は眉をひそめて電話を切った。
まさかと思ったが、またすぐに電話が鳴った。
「高橋さん、九条社長が……」
ついに我慢できず、高橋美咲はスマホの電源を切った。ようやく世界が静かになった。
突然かかってきた見知らぬ番号は、どれも九条蓮との関係を尋ねるものばかり。そこでようやく、何かが起きたのだと気づいた。
まさか、桜井奈緒の婚約披露宴での出来事がバレたのか?
みんな、本当に自分が九条社長の妻だと思っている?
あの日の婚約披露宴の後は特に気にしていなかったし、この二日間も何も変わったことはなかった。まさか今日になって記者たちが嗅ぎつけて、スマホが壊れるほど電話が殺到するなんて。
ここまで大事になったら、本物の九条社長にまで知られてしまうのでは?
もしかして、もうすでに知られているかも!
そう思った瞬間、高橋美咲の顔は真っ青になった。
終わった……!
その場のノリでイキっても、後から地獄が待っている。
今こそ、自分が撒いた種のツケを払う時だ!
自分と九条蓮は九条社長の名前を使って人を騙した。良くて誤解、悪くすれば詐欺だ!
もし本物の九条社長が怒って、名誉毀損で訴えられたり、損害賠償を請求されたらどうしよう……
ここ数日、高橋美咲は九条蓮と林健人の間で起きていることにすっかり気を取られていて、その結果がどうなるかなんて全く考えていなかった。今になってようやく、その事態の重大さに気づいた。
婚約パーティーの日、九条凛から「九条社長は出張で不在」と聞かされていたが、もう戻ってきているのかどうかも分からない。
もしまだ海外にいるなら、今のうちに何とかすれば、まだ取り返しがつくかもしれない……。
高橋美咲はスマートフォンの電源を入れ、機内モードに切り替えてからマンションのWi-Fiに接続し、ネットで最新のニュースを検索し始めた。
九条社長はさすが東京でも話題の人物で、ちょっとした動きでもすぐニュースになる。
今回の件は大きく騒がれているため、当然みんなが彼の一挙手一投足に注目していた。
九条蓮は滅多に表に出ないが、彼の車やナンバープレートは有名だ。
今朝、報道陣が九条インターナショナルに入る彼の車を撮影していた。それを見た高橋美咲の心は半分凍りついた。
九条社長はもう出張から戻ってきている!
もしかしたら、記者たちは彼から何も聞き出せなかったから、自分のところに押しかけてきたのかもしれない。
ダメだ!
今すぐ九条インターナショナルに行って、直接九条社長に謝罪しなければ。九条凛のためにも、どうか大目に見て許してもらい、自分が彼を騙ったことを咎めないでほしい——そう願うしかなかった。
そう思い立つと、高橋美咲はすぐに立ち上がり、身支度を整えてバッグを持ち、タクシーで九条インターナショナルへ向かった。
タクシーが九条インターナショナルの正面玄関に停まる。窓越しに見ると、外には大勢の人だかりができていた。手にしたカメラやマイクからして、どう見ても報道陣だ。
誰かが九条インターナショナルに出入りするたび、記者たちは肉の匂いを嗅ぎつけたハエのように一斉に群がり、我先にとインタビューしようとする。
You might also like




