Chapter 136
桜井奈緒の策略
絶対に桜井奈緒にしがみつかなくちゃ!
その時、病室のドアが再び開いた。
九条悠真が何かを手に持って入ってきた。月島瑠奈と望月麗奈がいるのを見て少し驚いたが、特に何も言わなかった。
「奈緒、今日は体調どう?」
桜井奈緒は目で月島瑠奈と望月麗奈に合図し、先に出ていくよう促した。
「九条マネージャーがいらしたので、私たちはこれで失礼します。」
そう言って、月島瑠奈と望月麗奈は一人ずつ部屋を出ていった。
さっき聞いたばかりのことを思い出し、桜井奈緒の目が鋭くなった。九条悠真を見つめて「悠真、私たち、みんな騙されてたのよ」と言った。
「どういう意味?」九条悠真は困惑した表情で見返した。
「はぁ……まさか高橋美咲がこんなことをするなんて思わなかった。自分で聞いてみて。」
そう言って、桜井奈緒は録音を再生した。スマホから高橋美咲の声が流れる。
「運転手を見つけて、九条蓮――九条インターナショナルの社長になりすまさせて、九条悠真の婚約披露宴で徹底的に連中の鼻を明かしてやった……」
それを聞いた九条悠真は固まった。
次の瞬間、彼の表情は一変し、桜井奈緒を睨みつけるようにして歯ぎしりしながら「これ、どこで手に入れたんだ?高橋美咲、本当に俺たちを騙してたのか?」と問い詰めた。
桜井奈緒は唇を噛みしめた。「自分の耳で録音を聞いたでしょ。それでもまだ信じられないの?」
痛々しい表情で、彼女は悔しそうに言った。「私たちを陥れるためなら、高橋美咲はどんな手でも使うのよ。」
「あんな映像まで偽造できる人よ……あの動画の中の人が本当に私だと思ってるの?私があなたを裏切るようなこと、するわけないじゃない……」
ここ数日、九条悠真は彼女にそれなりに優しくしてくれていたが、桜井奈緒には以前よりも距離を感じていた。
九条悠真の優しさには、どこか打算的なものが混じっていて、真心が感じられなかった。
それもきっと、彼女と柏木健人の動画のせいだろう。
どうせ柏木健人は今行方不明なのだから、この機会に全部高橋美咲のせいにして、自分の潔白を証明してしまえばいい。
九条悠真の顔色は青ざめ、そして緑色に変わった。彼は小さな声で「奈緒、そんなふうに考えるな。もちろん君を信じてる」と言った。
九条悠真はもともと半信半疑だったが、録音を聞いたことで心の中のわずかな疑念も消え、すべてが高橋美咲の仕組んだことだと確信した。
「今はこの件は気にしなくていい」と九条悠真は優しく言った。「まずは俺が婚約披露宴で起きたことを抑えて、できるだけ影響を小さくする手配をする。君は病院でしっかり休んでいてくれ。」
あの日の婚約披露宴で起きたことは、あまりにも大きな波紋を呼んだ。その日のうちにあらゆる手を尽くして揉み消したものの、上流階級の間ではまだ噂が絶えなかった。
早く帰った招待客たちは、その後高橋家が贈り物を持って現れたことも知らない。
すべて手配し直さなければならない。
九条悠真は高橋美咲の裏切りに激怒していたが、今はこれ以上騒ぎを大きくしない方がいい。事態が落ち着いたら、高橋美咲にきっちりケリをつけるつもりだ。
桜井奈緒の目が揺れ、顔には悔しさが滲んだ。
せっかく高橋美咲の弱みを握ったのに、このまま黙っているなんてできない。鉄は熱いうちに打て、というのは分かっている。
だが、せっかく九条悠真との関係が少し和らいだばかりなので、逆らいたくもなかった。だから素直に「分かった、そうする」と返事をした。
…
朝、高橋美咲は電話の着信音で目を覚ました。起き上がると、無意識に隣を見たが、九条蓮の姿はもうなかった。
きっと仕事に行ったのだろう。
You might also like




