Chapter 131
口まで入ってた義姉が飛んでいった
相沢翔は席につくとすぐ、隣のメニューを手に取り、積極的に九条蓮に差し出してにこやかに言った。「まだ食べてないでしょ?好きなもの頼んで。今日は僕のおごりだから、遠慮しないで。」
その様子を見て、凛の口元が引きつった。
これはもう完全勝利じゃん――戦わずして勝ったようなものだ。
「翔くん、どうしたの?」美咲は彼の変化に驚き、二人が何を話したのか気になった。
さっきまで、相沢翔は九条蓮のことを面と向かって悪く言っていたのに。
もともと美咲と相沢翔だけの食事会だったはずが、いつの間にか四人になり、しかも妙に和やかな雰囲気になっていた。
食事を終えた後、みんなで一緒にレストランを出た。
相沢翔は美咲を引っ張って脇に連れて行き、美咲はそのまま連れて行かれるしかなかった。「翔くん、どこに連れて行くの?」
凛はその様子を見て焦り、九条蓮の袖を引っ張った。「何もしないの?美咲が連れて行かれてるよ。」
九条蓮は自信満々に「心配いらない」と言った。
もし相沢翔がまだ九条家の支援を望むなら、正体を明かすことはない。九条蓮はまったく動じず、余裕の表情だった。
「彼には美咲を連れて行けない。」
「なんで?」と凛が不思議そうに尋ねた。
九条蓮は涼しい顔で淡々と「大阪の土地共同開発権を譲ったら、彼はあっさり手を引いた」と言った。
その表情は、そんな手段を使うことが卑怯だとも思っていない様子で、まるで天気の話でもするかのように落ち着き払っていた。
凛「……」
凛は相沢翔を軽蔑の目で見て、美咲にはもったいないと心底思った。
美咲はどんな男にばかり当たるんだろう。
まずは九条悠真、あの浮気男で二股野郎。そして今度は、金のために美咲をあっさり手放す初恋の人。
しかも、凛はずっと警戒していたのに、全然手強い相手じゃなかった。
「兄さん、たとえ彼を引かせたとしても、あの人は美咲の心の中の“月明かり”なんだよ……」
凛は頬杖をついて分析し始め、断言した。「でも、美咲の心から彼を追い出すことはできないよ!」
九条蓮の目が深く曇り、奥底に冷たい光がちらついた。「もう、あいつに勝ち目はない」
「でも、たとえ勝ち目がなくても、美咲があなたに惹かれる前に無茶しちゃダメよ。もし美咲が逃げ出したらどうするの?」
九条凛はふと思い出したように、少し怯えた様子で尋ねた。「ねえ……もし美咲が、あなたがずっと嘘をついてたことや、地位を使って他の男を卑怯なやり方で遠ざけてたって知ったら、あなたのことを嫌いになったりしない?」
高橋美咲が一番嫌うのは、裏切られることだった。
それは十分あり得る話だった。しかも彼女の心には、すでに別の男がいる。
凛の知る限り、美咲はお金や見栄に執着するタイプじゃない。きっと一度決めたら、振り返らずに去ってしまうだろう。
「やっぱり、美咲にはあなたの正体を絶対に知られちゃダメ。隠し通さなきゃ!」
九条蓮「……」
卑怯で下劣?本当に自分にそんな言葉が当てはまるのか?
戦いはすべて策略だ。多少の手段を使ったところで、何が悪い。
その頃、高橋美咲は九条蓮と九条凛の会話など知る由もなく、相沢翔と一緒に隅の方へ歩いていた。
美咲は翔の手を振りほどいた。「翔、いったい何がしたいの?」
相沢翔はストレートに尋ねた。「美咲、あの男のこと、どう思ってるんだ?」
「ど、どう思ってるかって……」高橋美咲は一瞬うしろめたさを感じた。九条蓮とは一年後に離婚する約束だし、はぐらかそうとした。「別に何とも思ってないよ。ただの……」
「嘘つくな!」翔が美咲の言葉を遮った。鼻で笑い、「お前、子供の頃から嘘つくと耳が真っ赤になるんだよ。今なんて、サルのお尻より赤いぞ」
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