Chapter 130
なぜ美咲を騙したのか(続き)
つまり、どちらも同じ立場で、互いに非難する資格はないという意味だった。
相沢翔は意味ありげな笑みを浮かべた。
高橋美咲は羽田さんのことを知っているし、実際に会ったこともある。でも、それを九条蓮に教えるつもりはなかった。
相沢翔の口元の笑みを見て、九条蓮は少し不快に感じた。
この男は自分を馬鹿にしている気がしてならない。高橋美咲が自分を好きだから、こんなに自信満々で、最後は自分を選ぶと確信しているのか?
九条蓮は無表情で言った。「最近、相沢家が大阪東部の土地の入札に参加していると聞きました。相沢家には全く有利な条件がない。もし九条家が協力すれば、共同開発も夢じゃない。」
相沢翔の顔から敵意が一気に消えた。
父親がどれだけコネを使って、この大きな案件に食い込もうと必死だったか。
もし九条家の協力が得られれば、一気にロケットに乗るようなものだ。本当に魅力的な話だった。
相沢翔の表情が変わるのを見て、
九条蓮は手応えを感じ、さらに続けた。「そのプロジェクトは今、僕が担当しています。相沢さん、よく考えてください。」
相沢翔は胸を押さえ、思わず九条蓮の足にしがみついて「義兄さん!」と叫びそうになるのを必死でこらえた。
深呼吸して気持ちを落ち着かせ、「九条さん、実は羽田さんとの関係はとても安定していますから……」と取り繕うように言った。
その言葉を聞いて、九条蓮の目に嘲りの色が浮かんだ。
これが高橋美咲の好きな男なのか?
少しの利益のために、何のためらいもなく彼女を切り捨てる。全く脅威ではない。
話し終えると、相沢翔は九条蓮を真剣な表情で見つめて尋ねた。「九条さんは、本気で美咲のことを考えているんですか?」
利益に心が揺れながらも、高橋美咲の安全だけは確かめたかった。
その問いに、九条蓮の口元がゆっくりと持ち上がり、かすかな微笑みが浮かんだ。
その時、高橋美咲が席に戻ってきた。
九条凛は首を伸ばして、九条蓮と相沢翔の方を興味津々で覗き込んでいた。
美咲が戻るや否や、凛はすぐに手を伸ばして彼女を引き寄せ、自分の隣に座らせた。
「美咲、ほんとに姉妹らしくないよ!あんなイケメン知ってたのに、なんで私に教えてくれなかったの?」
「別に言う機会がなかっただけだよ。」
そもそも美咲と相沢翔は普段あまり会うことがなく、主にネットで連絡を取っていた。だから、いちいち凛に従兄弟がいるなんて話す発想もなかった。
でも、なぜか凛はまるで美咲が誰かを裏切ったみたいな顔をしている。
「あんた……」凛は一瞬ためらったが、すぐに九条蓮のために状況を探ろうとした。「この人といつ知り合ったの?」
「小さい頃から知ってるよ。」美咲は素直に答え、何も疑っていなかった。
その答えを聞いた凛の顔は、完全に敗北感でいっぱいになった。幼なじみってこと?
兄貴が馬で追いかけても追いつけないじゃん!
しかもこの恋のライバル、九条悠真よりも手強そう。初恋は一番忘れられないものだし。
美咲は不思議そうに「どうしたの?」と尋ねた。
凛は小さな声でぼそっと「別に。ただ、口まで入ってた義姉が飛んでいっちゃったから、ちょっと落ち込んでるだけ」と呟いた。
声が小さくてはっきり聞こえず、美咲は特に気に留めなかった。ただ凛が落ち込んでいるのだと思い、慰めようかと考えた。
ちょうどその時、九条蓮と相沢翔が戻ってきた。
相沢翔は九条蓮の後ろについて、にこやかな笑顔を浮かべていた。さっき二人でとてもいい話をしたようだった。
凛も美咲も、目が飛び出しそうなほど凝視した。
どういうこと?
どう考えても、この二人が和解するなんてありえないはず。
凛は本気で、九条蓮が本当の身分を使って恋のライバルを潰したんじゃないかと疑った。
美咲にバレるのを怖がらないの?
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