Chapter 127
高橋美咲の好みのタイプ
自分がしたことは、無謀で無茶だと分かっていた。
でも、あの時は本当に追い詰められていた。九条蓮の身代わりを頼んでまで、九条悠真の婚約披露宴に一人で行かなければ、一生消えない屈辱を背負うことになったかもしれない。
小さい頃から、彼女はずっと負けず嫌いだった。
父親が母親を冷たく扱った時も、高橋家を出て母親と一緒に暮らし、令嬢から母子家庭の普通の女の子に転落しても、自分の意地を貫いた。
そして今、九条悠真のことでも、同じように自分のプライドを守るためにすべてを投げ打ったのだ。
自分の誇りのためだけに、他のことは全部捨ててしまった。
そんな高橋美咲の姿を見て、相沢翔も少しだけ気持ちが和らぎ、表情もやや穏やかになった。
「分かった。もう済んだことだし、今さら責めても仕方ない」
相沢翔は真剣な顔で言った。「それで聞くけど、お前、本当にあいつのこと分かってるのか?全部知ってるのか?あいつに嘘をつかれてるってことはないのか?」
相沢翔の苛立った表情を見つめながら、高橋美咲の瞳には戸惑いの色が浮かんでいた。
自分は本当に九条蓮のことを理解しているのだろうか。
実際、九条蓮と過ごした時間はごく短いものだった。彼はとても紳士的で、完全な安心感を与えてくれる人だと感じていた。
だが、相沢翔にそう問われてみて、実は九条蓮のことをそれほどよく知らないのだと気づいた。
彼は妹がいると言っていた。家族はその妹だけだと。
けれど、その妹に会ったことは一度もないし、九条蓮が九条凛と密かに会っていたことも知らされていなかった。
結局のところ、九条蓮も自分のことを本気で考えてくれていたわけではない。すべては自分の一方的な思い込みだったのだ。
考えれば考えるほど、高橋美咲の表情は暗くなっていった。
自分が九条蓮に抱いていた感情も、九条悠真に裏切られて心が弱っていた時に、たまたま優しくされたことで、感謝の気持ちを恋心と勘違いしてしまっただけなのかもしれない。
相沢翔はやはり頼れる兄のような存在だった。高橋美咲が今にも泣き出しそうな顔をしているのを見て、自分の口調がきつすぎたことに気づいた。
「美咲、怒ってるわけじゃない。ただ、君に騙されてほしくないんだ。九条悠真で十分辛い思いをしただろう。もしまた同じことがあったら……」
高橋美咲はすぐに「彼は違う」と反論した。
思わず九条蓮のことをかばってしまった。
理由は分からないが、どうしても九条蓮は九条悠真とは違うと感じてしまうのだ。
「お前なあ!本当に俺を殺す気か。そんなにお人好しだと、十回や八回は騙されないと分からないのか?」
まさか叱られるとは思わず、高橋美咲はひどく傷ついた気持ちになった。
ただ一言、公平に九条蓮のことを言っただけなのに。
相沢翔はどうしてここまで自分を罵るのだろう。
「九条悠真は偽善者だけど、九条蓮はそうじゃない。初めて会った日から、彼は他の人と違うって感じたの。」
「どこが違うんだ?」
高橋美咲は「なんとなく違うの」と答えた。
その言葉を聞いて、相沢翔は怒りで倒れそうだった。高橋美咲は人の善し悪しを第六感だけで判断しているのか?
しかも、九条蓮は九条悠真とは違うとまで思っている。確かに家柄も何もかも九条蓮の方が上だが、美咲のことを本気で考えているわけではない。ただ遊びたいだけだ!
それでも、九条蓮がどうやって美咲を騙したのか、少し興味が湧いてきた。
相沢翔は「どうして彼と付き合うことになったんだ?」と尋ねた。
「親友の九条凛が九条社長の妹で、九条悠真に裏切られた後、彼女が私のために相手を探してくれて、それで後から……急いで結婚したの。」
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