Chapter 124
絶対に何かおかしい
「ご馳走するのは私の方だよ!」と高橋美咲は言い返した。
今は相沢翔ほど裕福じゃないけど、一食くらいなら自分で払える。
二人は空港を出て、楽しそうに話しながら歩いていった。
九条凛と九条蓮はキャンプを早々に切り上げ、九条家本邸に戻った。
そもそもこのキャンプは高橋美咲のために企画されたものだった。主役がいなくなった今、これ以上いても仕方がなかった。
でも、まったく収穫がなかったわけじゃない。少なくとも高橋美咲と九条蓮は、しばらく離婚しないことで合意していた。
ほどなくして、高橋美咲が空港で相沢翔と抱き合っている写真が、すぐに九条蓮のスマホに送られてきた。
男性が高橋美咲をしっかり抱きしめているのを見て、九条蓮は眉間に深いしわを寄せた。
九条蓮は高橋美咲の経歴を調べていたが、なぜか母親のことは調べていなかった。高橋美咲に九条悠真という元恋人がいたことは知っていたが、相沢翔がどこから現れたのかは全く知らなかった。
今の九条蓮にとって、相沢翔は完全に恋のライバルだった。
九条凛は写真を手に取り、ちらっと見て「誰この人?結構イケメンじゃん……いや、もちろんお兄ちゃんには敵わないけど。お兄ちゃんは東京と大阪の女性が一番結婚したい男なんだから!」
言いかけて慌てて話を変えた。
そしてすぐに続けた。「お兄ちゃん、美咲の“白月光”が目の前に現れてるのに、何もしないつもり?今動かなきゃ、奥さん取られちゃうよ!」
九条凛は、あのクズの九条悠真さえ片付けば一件落着だと思っていた。
まさか、こんな男が現れるなんて。
親友から義姉になる道が、どうしてこんなに険しいの?
……
洋食レストランで、相沢翔と高橋美咲は食事をしていた。
相沢翔は高橋美咲を見つめて言った。「美咲、もう何年も家を離れてるけど、本当に戻る気はないの?あの人は今でも美咲のことをすごく気にかけてる。君もずっと苦労してきただろう?」
相沢翔の言う「あの人」とは、高橋美咲の父・高橋正人——相沢翔の義理の叔父のことだった。
高橋正人の話になると、高橋美咲は本能的に身構えてしまう。
今の高橋家に自分の居場所はない。高橋正人には妻も娘もいる。戻ったところで、結局は永遠に馴染めない部外者でしかない。
戻る意味なんてあるのだろうか。
それに、母のことがどうしても許せず、高橋正人を受け入れることはできなかった。
「翔、もう説得しないで。自分のことは自分で分かってるから。」
高橋美咲の決意に満ちた表情を見て、相沢翔は小さくため息をついた。
子供の頃から大人になるまで、高橋美咲はずっと頑固だった。自分で納得しない限り、高橋家に戻ることはできないだろう。
今回、高橋正人は執事に贈り物を持たせて送り出したが、思いがけず結婚披露宴で花嫁のプライベート動画が流出したことを知った。執事が戻ると、当然すべてをきちんと報告した。
高橋正人は美咲が道を踏み外してしまい、何かあったらと心配していたが、高橋花の体調もあり、自分では来られなかった。
結局、相沢翔に助けを求めるしかなかった。高橋正人は「もし美咲が何か必要なら、どんなことでも力になってやってほしい」とも伝えていた。
だが今、相沢翔が高橋美咲の様子を見てみると、思っていたほど悪くはなさそうだった。
もしかして、ただの噂だったのかもしれない。
何しろ、和田琉生は今や高橋花の側の人間で、高橋花は高橋恵と関わりのある自分たちにあまり好意的ではなかった。
高橋美咲が高橋家に戻らなくても、別に問題ないのではないかと相沢翔は思った。高橋家がそんなに素晴らしい場所というわけでもない。美咲がこれから幸せに暮らしてくれれば、それで十分だ。
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