Chapter 125
妻が奪われそう
そう考えた相沢翔は、「美咲、あの男はどうなんだ?今度機会があれば、翔にも一度会わせてくれよ」と尋ねた。
相沢翔は高橋美咲に恋人がいることを知っていた。たしか九条家の一員で、名前は九条悠真だったはずだが、会ったことはなかった。まさか次に美咲の話を聞いたときには、二人が婚約したという話になっているとは思わなかった。
九条家は大阪でも有数の名家だ。
家柄には満足していたが、人柄や容姿はどんなものか分からなかった。
相沢翔に恋人の話をされ、高橋美咲の顔に一瞬気まずそうな表情が浮かんだ。
以前、美咲は相沢翔に九条悠真のことを話したことがあったので、翔も悠真の存在を知っている。だが今は別の男性に変わってしまった。どう説明すればいいのか分からなかった。
隣の個室では、月島瑠奈と望月麗奈がこっそり様子をうかがっていた。
さっきまで食事をしていた二人は、偶然高橋美咲が男性と一緒に入ってくるのを目撃した。二人はとても親しげに見えた。
これは大きなネタを掴んだとすぐに気づき、慌てて身を隠した。
まさかの偶然で、高橋美咲がすぐ隣に座ったのだ。
美咲はあまりにも大胆すぎる!
すでに九条蓮という大金星を掴んでいるのに、また別の男とイチャイチャしているなんて。これはしっかり聞いておかないと。もし美咲の弱みを握れたら、いざという時に脅せる。
月島瑠奈と望月麗奈はスマホを取り出し、録音を開始した。
高橋美咲は、月島瑠奈と望月麗奈が隣にいることなど知らず、相沢翔と楽しそうに会話を続けていた。
相沢翔は小声で「美咲、婚約披露宴で一体何があったんだ?」と尋ねた。
高橋美咲は深く息を吸い、ためらいの色を浮かべた。
本当のことを話すべきかどうか、実は迷っていた。二人は幼い頃から一緒に育ち、相沢翔はずっと美咲に優しかった。
……隠すこともないかもしれない。
高橋美咲は大きく息を吸い、「翔、悠真とは別れたの」と言った。
それを聞いた相沢翔は、眉をひそめてすぐに「何があったんだ?」と問い詰めた。
「彼、他の女と浮気して私を裏切ったの。あの婚約披露宴は、私と彼のじゃなくて、彼とその女の婚約披露宴だったの。私はその後、運転手を雇って九条インターナショナルの九条蓮のふりをしてもらって、悠真たちを思いっきりやり込めてやったの……」
高橋美咲は簡単に説明した。
相沢翔はそれを聞いて胸が痛んだ。まさか美咲のような素敵な子が、九条悠真に浮気されるなんて!
その時、隣の月島瑠奈と望月麗奈は目を見開いて固まっていた。
何ですって!九条蓮は偽物だったの?しかもただの運転手?
「ひぃっ——」
月島瑠奈と望月麗奈は思わず息を呑んだ。
これは衝撃的な秘密だ!
ずっと不思議だった。高橋美咲みたいな女が、どうして九条社長の目に留まるのかと。まさか、ただの雇われ役者で、悠真を辱めるための演技だったとは!
これは絶対に桜井奈緒に伝えなきゃ!
二人は動揺して、テーブルの水グラスを倒しそうになった。帽子を深くかぶり、顔を隠して、隅からそっと抜け出した。
ドアを閉めるとき、慌てすぎてガラス戸にぶつかり、大きな音を立ててしまった。
二人はこれ以上その場にいられず、振り返りもせずに逃げていった。
音を聞いた高橋美咲は、月島瑠奈と望月麗奈の去っていく後ろ姿を見て、どこかで見たことがあるような気がして目を細めた。
その時、もう一組の男女が入口から入ってきた。
九条蓮と九条凛だった!
高橋美咲は目を見開いて驚いた。
まだキャンプ中じゃなかったの?どうしてここに?
まさか、この二人が自分を待ち伏せに来たとは思いもしなかった。
九条凛は入ってくるなり美咲を見つけ、すぐに手を振って驚いたふりをした。「美咲さん、偶然ね!」
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