Chapter 118
私の人生は他人が決めるものじゃない
そんなこと考えたこともなかった。
高橋美咲は「でも、さっき二人はそんなに親しくないって言ってなかった?」と尋ねた。
九条凛は表情を変えずに「それは恥ずかしかったから言っただけ!」と返した。
高橋美咲はさらに「じゃあ、森岡千隼は?」と続けた。
「彼は……」九条凛は歯を食いしばり、「神谷海斗がずっと海外にいたから、寂しくて森岡千隼を代わりにしてただけ!本当は森岡千隼のことなんて全然好きじゃない」と言い切った。
高橋美咲は半信半疑だった。
まあ、神谷海斗と森岡千隼はだいぶタイプが違うけど、親友には幸せになってほしいと思った。
だから高橋美咲はもう遠慮せず、荷物をまとめて隣のテントに入った。
九条凛はほっと息をついた。
でもすぐに顔が曇る。兄の幸せのために、ここまで犠牲にしてきた自分……!
まあ、神谷海斗は兄みたいなものだし、兄妹で寝るくらい恥ずかしいことじゃないか。
その頃、少し離れたタープの下では、九条蓮がバーベキューの材料を並べ、神谷海斗が火起こしを担当していた。
神谷海斗はうちわで火をあおぎながら、九条凛と高橋美咲がテントに入る様子をちらりと見て、「スピード婚にキャンプか。九条社長も最近はなかなか派手だな……」とつぶやいた。
九条蓮は目を上げて、冷ややかに一瞥した。「今夜は美咲を凛と一緒に寝かせる。」
神谷海斗はそれを聞いた瞬間、口をつぐんだ。
容赦ないな、と内心思う。
ただ、少し気になることもあった。九条家の大旦那様はずっと九条蓮に名家の令嬢を紹介して、家の後継ぎにふさわしい妻を探していたはず。
でも九条蓮は、そういう社交界の女性たちにまともに目もくれなかったのに、突然高橋美咲とスピード婚。らしくない。
何か裏があるのか?
神谷海斗はさっき高橋美咲の素性も調べていたので、念のため忠告した。「蓮、九条家の大旦那様の基準はめちゃくちゃ高い。あの家柄じゃ、九条家の門はくぐれないぞ。」
九条蓮ほどの立場なら、しかも九条家の大旦那様から大事な仕事を任されている以上、家の意向に従って政略結婚するのが当然。九条家が遊びを許すはずがない。
九条蓮は淡々と「俺のことは他人が決めることじゃない」と言った。
神谷海斗は内心で小さく鼻で笑った。九条蓮が本当に九条家を掌握しない限り、大旦那様の支配からは逃れられないだろう。
九条蓮は神谷海斗の考えを見抜いていた。彼の肩を軽く叩き、視線を九条凛に向けて意味深に言った。「義兄としてできるのはここまでだ。あとは自分で頑張れ。」
それを聞いて、神谷海斗は思わず笑った。
まさか九条凛があの成金男と別れていたとは。これでまた希望が持てる。
その後、四人でバーベキューを始めた。高橋美咲は九条蓮の隣に座り、小さな手で串をくるくる回していた。
九条蓮は炭火で赤くなった彼女の頬をちらりと見て、額に汗がにじんでいるのに気づき、ティッシュを取り出して拭ってやった。
「あ、ありがとう……」
九条凛は満足げに頬杖をつき、二人のやりとりをキラキラした目で見守っていた。
最高!ついに美咲と兄のイチャイチャを間近で見られるなんて。思わず天を仰いで笑い出しそうだった。
ふと、九条凛は九条蓮の言葉を思い出した。九条蓮は、九条悠真の婚約披露宴の後の高橋美咲の様子から、まだ九条悠真を忘れられていないんじゃないかと言っていた。
九条凛は咳払いして、興味津々に「美咲、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」と切り出した。
「ん?何の質問?」高橋美咲は手が空いたタイミングで九条凛を見上げた。
「その……まだ九条悠真のこと、好きだったりする?」
その言葉を聞いた瞬間、九条蓮も高橋美咲の方を見た。彼もまた、高橋美咲が九条悠真に未練があるのか知りたかった。
高橋美咲はまったくためらわずに言った。「あんなクズに未練なんてあるわけないでしょ?頭おかしいんじゃない?」
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