Chapter 113
契約の終わりが近づいて(続き)
助けてくれて、ありがとう——
来てくれて、ありがとう——
でも、これからはそれぞれの道を歩き、幸せを見つけていくのだろう。
九条蓮の深い瞳が彼女に向けられる。「礼なんていらない。俺がすべきことだ。」
高橋美咲は無理に笑った。本当にその通りだ。契約がある以上、助けるのは当然のこと。
「今日はお疲れ様。早く休んで。」
そう言って、高橋美咲は部屋に戻った。ドレスを脱ぎ、熱いシャワーを浴びて、ようやく少し気持ちが落ち着いた。
その頃、九条蓮はリビングのソファでスマホを見ていた。時折、バスルームの方に目をやり、高橋美咲が出てくるのを待っているようだった。
カチャリとバスルームのドアが開き、高橋美咲がさっぱりとした様子で出てきた。ソファの九条蓮に軽く「もう休むね。おやすみ」と声をかける。
それだけ言うと、九条蓮の返事も待たずに、そのまま部屋へ戻っていった。
九条蓮は眉をひそめ、部屋の方へ歩み寄った。ちょうど入ろうとした瞬間、高橋美咲は彼の前で寝室のドアを閉めてしまった。
「……」
目の前のしっかり閉ざされたドアを見つめ、九条蓮は眉間に深いしわを寄せた。まるで蚊でも潰せそうなほどだ。
部屋を追い出されたのか?
九条蓮は暗い表情のまま、再びソファに腰を下ろした。
九条悠真の婚約パーティーを出てからずっと、高橋美咲の様子は異様に沈んでいる。まだ九条悠真への未練があるように見えた。
さっき、九条蓮は高橋美咲と話したかったのに、まさかドアを閉められてしまうとは思っていなかった。
彼はスマートフォンを取り出し、高橋美咲にメッセージを送ろうとしたが、まだ打ち終わらないうちに、まるで心を読まれたかのように九条凛からメッセージが届いた。
九条凛:「ねえ兄さん、私、今日うまくやったでしょ?美咲さん、今日めちゃくちゃ輝いてたよ!」
九条蓮は婚約パーティーで起きたことを思い返した。
確かに彼女は輝いていた。九条悠真が徹底的に恥をかかされたのに、高橋美咲はあまり嬉しそうには見えなかった。なぜだろう?
「うん。」彼は一言だけ返した。
「兄さん、冷たすぎ!私、あんなに頑張ったのに。何かご褒美くれてもいいんじゃない?」九条凛はしつこくねだってきた。
「今日一日、好きなだけ俺のカードで買い物していい。上限なし。逃したら知らないぞ。」
そのメッセージを送ると、九条凛から大喜びのスタンプが飛んできた。向こうでどれだけ喜んでいるか、想像に難くなかった。
九条蓮がスマートフォンを置こうとしたとき、また九条凛からメッセージが届いた。
今度は少し様子をうかがうように、「兄さん、美咲さんと今どうなの?本当にお義姉さんにする気ある?美咲さん、男運が悪かっただけで、本当はすごくいい子なんだよ……」
九条凛の止まらないおしゃべりの途中で、九条蓮はふいに「彼女、あまり嬉しそうじゃなかった」と言った。
「え?嬉しそうじゃなかった?」九条凛は軽く推測して、「まさかまだあのクズ悠真のこと引きずってるとか?失恋を引きずってるのかな?」
九条凛の言葉を見て、九条蓮の表情はさらに険しくなり、周囲の空気が冷たくなった。
九条凛まで自分と同じことを考えていた――高橋美咲は九条悠真を忘れられないのだと。
だからこそ、高橋美咲は一晩中沈んだままだったのか。九条悠真の何が、彼女をそこまで引き止めるのだろう。
九条蓮はしばらく返事をしなかった。すると九条凛から慌てて電話がかかってきた。
九条蓮が電話に出ると、九条凛は待ちきれない様子で「兄さん、さっきの本気?美咲さん、本当に元気ないの?」と聞いた。
「ああ。」九条蓮は低い声で答えた。
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