Chapter 100
九条ホールディングス社長・九条蓮(続き)
九条蓮が口を開く前に、高橋美咲が先に爆発した。
あの恥知らずな九条悠真――いらなかった女だなんて、どの口が言うの?
彼女の表情は一瞬で冷たくなった。そして嘲るように言い放った。「九条悠真、まず事実をはっきりさせて。私があんたを捨てたのよ。だって、あんたは桜井奈緒と寝たじゃない。私は何もやましいことなんてないし、九条蓮と結婚して何が悪いの?」
九条蓮は口元を緩め、低い声でチェロのように心地よく笑った。
彼は手を伸ばし、高橋美咲の腰を抱き寄せて優しく言った。「美咲は男運が悪かっただけ。でももう大丈夫。これからは俺がしっかり守る。絶対に傷つけたりしない。」
九条蓮の深い瞳が高橋美咲に注がれる。「美咲、クズに当たったのは君のせいじゃない。天が君を俺のもとに導いたんだ。他の男のことで怒るなよ。俺、嫉妬しちゃうからな?」
その瞳は暗く、優しい愛情に満ちていて、小さな渦のように彼女を引き込もうとする。
高橋美咲はその瞬間、息が止まった。
本当に九条蓮が自分を深く愛しているような錯覚に陥ってしまう。たとえ彼が協力のために言っているだけだと分かっていても、この男には完全に心を奪われてしまう。
やばい……!
まさか彼が甘い言葉を囁くと、こんなにも自然で、誰も抗えないなんて思わなかった。
桜井奈緒は高橋美咲と九条蓮が並ぶ姿を見つめていた。
二人はとてもお似合いで、まるで理想のカップルのようだった。その瞬間、隣の九条悠真は一気に色褪せて見えた。
しかも九条蓮が高橋美咲をこれほどまでに守っているのを見て、桜井奈緒の中の黒い嫉妬心が今にも溢れ出しそうだった。
高橋美咲が「何もやましいことはない」だって?
よくもそんなことが言えたものだ!
桜井奈緒は心の中で冷たく鼻で笑い、顔には一瞬だけ邪悪な光が走った。自分の手元には高橋美咲の動画がある。もしそれをみんなの前で流せば、きっとこの男にも捨てられるはず。
そう思うと、唇の端がほんのわずかに吊り上がった。あの女がいつまで得意げでいられるか、見ものだわ。
九条蓮の登場は、婚約パーティーの流れを一気に変えてしまった。
もともと彼を目当てに来ていたゲストも多く、九条蓮が姿を現すや否や、経営者たちは肉を見つけた狼のような目つきで彼に群がり、我先にと名刺を差し出した。
これまで外部の誰も九条蓮の姿を見たことがなかったのに、今日のような場でその素顔を目の当たりにできるのだから、興奮しないはずがない。
九条蓮はビジネス界でも奇跡の存在だった。九条インターナショナルに入ってからわずかな期間で、企業価値をほぼ10倍にまで引き上げたのだ。
しかも、彼が九条家の次期当主だという噂まである。
それまで九条悠真の周りに集まっていた重役たちも、次々と九条蓮のもとへと移動し、九条悠真は誰にも相手にされず、隅に取り残されてしまった。
ついさっきまで皆にちやほやされていた光景が、まるで夢だったかのように思える。
彼の顔は怒りで真っ青になっていた。
くそっ!
九条蓮に全部持っていかれた。今日は自分の婚約パーティーなのに、本来なら自分が主役のはずだったのに!
一方、高橋美咲の周りにも多くの令嬢たちが集まっていた。さっきまで彼女を嘲笑っていたのに、九条蓮の妻だと知った途端、態度が一変した。
「美咲さん、そのドレスすごく素敵。まさか九条ホールディングスの社長夫人だったなんて。だからジンニのショーピースを着て来られたのね。」
「本当よ。桜井奈緒さんのドレスなんて比べものにならないわ。」
「九条社長って本当に謎めいてるよね。美咲さん、どうやって知り合ったの?」
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