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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 10 - 九条インターナショナルから今すぐ出ていきなさい

Chapter 10

九条インターナショナルから今すぐ出ていきなさい

桜井奈緒は大学時代のルームメイトで、家もせいぜい中流程度だった。

桜井奈緒がどうやって九条沙耶香の心を掴み、特別に気に入られるようになったのか、美咲には全く分からなかった。もし自分の父親が高橋正人だと沙耶香に話していたら、すべてが違っていたかもしれない。

でも、高橋正人とは長年不仲で、高橋家を出てからは一度も頼ろうと思ったことはなかったし、今も頼るつもりはなかった。

高橋美咲は、もっと努力すれば九条沙耶香も自分と悠真の交際を認めてくれると信じていた。だが今は、沙耶香が絶対に認めないことがはっきり分かった。

幸い、悠真には高橋正人のことを一度も話したことがなかった。

「高橋美咲、何てこと言うの!」その言葉を聞いた九条沙耶香は、顔を歪めて全身を震わせるほど激怒した。

白い手が九条沙耶香の手にそっと重なり、桜井奈緒が優しく言った。「お義母様、美咲はいつもああなんです。気にしないでください。」

九条沙耶香の依頼も、桜井奈緒が手配したものだった。沙耶香が高橋美咲を見下しているのを知っていたから、わざわざ美咲を呼び出して辱めるためだった。

思い通りの展開になり、桜井奈緒はゆっくりと口元をほころばせた。

「そうよね。私がこんな女と同じレベルに落ちるわけないじゃない。」九条沙耶香は軽く鼻で笑った。

そして冷たい顔で、「高橋美咲、今すぐ九条インターナショナルから出ていきなさい。さもないと警備員を呼ぶわよ!」ときっぱり命じた。

高橋美咲は相手にする気もなかった。

ポケットからスマホを取り出し、事務的な口調で言った。「九条さん、一週間前に壁画のご依頼をいただきましたよね。オンラインで契約も交わしています。もしキャンセルされるなら、すでにお支払いいただいた手付金は返金できません。」

高橋美咲は九条沙耶香を見据え、落ち着いた声で「現金でお支払いですか?それともLINE Payですか?」と尋ねた。

「あんた!」九条沙耶香は怒りでいっぱいだった。

壁一面の壁画は安くない。払えない額ではないが、高橋美咲に追い詰められ、脅されたような気分になり、プライドの高い沙耶香はとても不愉快だった。

「お義母様、もう依頼してしまったのですから、他の人を探すのも時間がかかりますし、キャンセルはやめましょう。」と桜井奈緒が横から助言した。

大学時代から、桜井奈緒は高橋美咲にずっと嫉妬していた。二人とも同じような家庭環境だったのに、美咲の方が知識もあり、立ち居振る舞いも良く、男子からも美咲の方がずっと人気だった。

今、悠真を奪ったことで、ようやく美咲に勝った気がしていた。

もし美咲が壁画を描きに来れば、また何度でも見下して辱めるチャンスができる。

九条沙耶香は鋭い目でにらみつけ、乱暴に命じた。「ちゃんと描きなさいよ。少しでも出来が悪かったら、弁償させるから!」

「ご心配なく。腕には自信がありますので、期待を裏切りません。」

そう言い残し、高橋美咲はその場をきっぱりと立ち去った。

その時、道端に停まったロールスロイスの中で、スモークガラス越しの男がわずかに眉をひそめ、険しい表情を浮かべていた。

さきほどの高橋美咲と九条沙耶香の言い争いは、すべて彼の耳に届いていた。

九条蓮は、今朝あの嵐のような結婚相手と別れたばかりなのに、ほんの一瞬でまた九条インターナショナルで鉢合わせすることになるとは思ってもみなかった。

だが、まさか彼女が九条悠真の元カノだったとは、夢にも思わなかった。

前方の運転席で、真壁直人は車内の重苦しい空気を敏感に察し、息をするのさえ控えめにしていた。

それでも意を決して口を開き、「九条社長? あちらは九条沙耶香様、九条和真様の奥様です。高橋さんがご一緒にいるなんて、どういうことでしょうか?」と念を押した。