Chapter 950
番外編 愛の続き2(続き)
二人とも私をいじめてる!
それでも九条凛は諦めなかった。九条瑠衣はまだ話し始めていないのだから、勝つチャンスはある。彼女は他にもいろいろなものを取り出して九条瑠衣をあやし、最初に自分を呼ばせて、あとで兄の前で自慢しようとした。
ところが、どれだけあやしても、九条瑠衣はただおもちゃで遊び続け、顔を上げることすらしなかった。
九条凛は不満げにぼそっとつぶやいた。「なんで話さないの?もしかして自閉症なんじゃ……?」
その言葉を聞いた九条家の大奥様は、九条凛の頭をぴしゃりと叩いた。「何を馬鹿なこと言ってるの。瑠衣ちゃんはとても賢いのよ。ただ、あなたに構いたくないだけ。ここで邪魔しないで。本当に子どもが好きなら、神谷海斗さんと自分の子どもを作ればいいじゃない!」
九条家の大奥様の言葉に、九条凛の頬は一気に赤くなった。
高橋美咲の結婚式で自分の気持ちに気づいて以来、神谷海斗を見る目がすっかり変わってしまった。
でも、あの男は何も感じていないようで、神谷海斗が自分のことをどう思っているのか全然分からない。それどころか、いつか彼が好きな女性を見つけてしまったら、自分は身を引かなければならないのではと、それが一番怖かった。
九条凛がしょんぼりしていると、突然ドアが開き、九条蓮が完璧に仕立てられたスーツ姿で入ってきた。
高橋美咲は九条蓮の帰宅を見てすぐに立ち上がり、彼の手から上着を受け取りながら、優しく「おかえりなさい。今日もお仕事お疲れさま。体調はどう?」と声をかけた。
子どもの世話があるため、高橋美咲はほとんど会社に行かなくなっていた。メゾン・ヴェルヌの業務は自宅で十分にこなせており、たまに店舗の視察に出かける以外は、特に心配することもなかった。
九条蓮は高橋美咲を見ると、目に優しい光を浮かべて、静かに「うん、悪くないよ」と答えた。
どんなに大変なことがあっても、高橋美咲と子どもの顔を見ると、すべての疲れが報われる気がした。高橋美咲が意識を失っていたあの時、自分が目を覚まし、彼女のために良い生活環境を整えようと決意したことを、今は心から感謝している。
もしあのままだったら、今もまだ狭いアパートで苦労していたかもしれない。けれど、すべては過ぎ去り、今は晴れやかな日々だ。
九条蓮は高橋美咲を抱き寄せてキスしようと手を伸ばしたが、その時、九条瑠衣が突然おもちゃを放り出し、ちょこちょこと短い足で九条蓮のもとへ駆け寄った。
九条瑠衣は九条蓮の足にしがみつき、小さな顔を上げて「パパ、だっこ」と言った。
九条凛はその幼い声を聞いて、目を大きく見開いた。
「うそでしょ!小さな暴君、もうしゃべれるの!?しかも最初に呼んだのが兄さんだなんて!」と叫んだ。
その時になって、みんなは九条瑠衣が本当に言葉を発したことに気づいた。彼女は九条蓮にだっこをせがんだのだ。九条蓮はしゃがみ込んで九条瑠衣を抱き上げた。パパに抱っこされると、九条瑠衣は頬にキスをして、よだれの跡を残した。
大好きなパパを見上げて、九条瑠衣は嬉しそうにくすくす笑った。
九条蓮の目はさらに優しくなった。目の前の子どもは高橋美咲に似た眉と目を持ちながら、全体的には自分にもよく似ている。彼女は二人の愛の証であり、愛の続きそのものだった。
九条蓮は九条瑠衣にキスをして「瑠衣、もう一回パパって呼んでくれる?」と頼んだ。
「パパ。」今度は九条瑠衣がはっきりと、正確に発音した。さっきの言葉が偶然ではなかったことを証明するように、彼女は本当に九条蓮をパパと呼んだ。最初に話しかけたのは九条蓮だった。
九条凛はすっかり落ち込んだ。完敗だった。
高橋美咲はそっと父娘の姿を見守りながら、口元に幸せそうな微笑みを浮かべていた。
You've finished 裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました.




