Chapter 316
誰に頼まれて来たのか
たとえ九条蓮が気にしなくても、九条家のご両親が黙っているはずがない。
これが森川佳鈴が思いついたばかりの計画だった。
彼女は九条家軽井沢別邸のインターンウェイター二人に金を渡し、高橋美咲には家柄も何もなく、金持ちを狙いに来ただけだから好きにしていいと吹き込んだのだ。
その二人のウェイターは普段から遊び慣れていたが、こんなおいしい話が転がり込むとは思ってもみなかった。
金ももらえて女とも遊べる、二人は即座に話に乗った。
森川佳鈴は鼻で笑った。高橋美咲を徹底的に潰してやるつもりだった。
少ししたら、他のパーティー客をあそこに誘導してやる。そうすれば高橋美咲は完全に終わりだ。
その時になれば、自分の名誉のために高橋美咲は大事にできず、責任追及もできない。それに、二人には動画を撮るよう指示してある。弱みを握れば、九条蓮に告げ口されても怖くない。
そう考えると、森川佳鈴は顔を上げて高らかに笑った。
「あはははは!!」
これで高橋美咲はただの尻軽女、人生は終わり。あの取り巻きの令嬢たちも、もう誰も媚びてこないだろう。
その頃、会場にいた九条凛は高橋美咲が長い間戻ってこないことに気づき、胸騒ぎを覚えていた。
トイレに行くと言っていたが、こんなに時間がかかるはずがない。
九条凛もじっとしていられず、すぐにトイレに探しに行った。しかし、近くのトイレはどこも空っぽで、高橋美咲の姿はなかった。
それから高橋美咲に電話をかけたが、応答はなく、ついには電源も切れてしまい、何度かけても繋がらなくなった。
まずい!絶対に何かあった。
九条凛は顔面蒼白になり、彼女をここに連れてきた自分の責任を痛感した。本当に何かあったら、何度死んでも償えない。兄にどう説明すればいいのか——。
九条凛は宴会場に戻り、佐伯葉月に高橋美咲を見なかったか尋ねたが、彼女も知らないと言う。
その瞬間、九条凛の心は底まで沈んだ。
その時、森川佳鈴はすでに会場に戻っていた。九条凛が慌ただしく出入りするのを見て、唇の端にうっすらと笑みを浮かべた。
ウェイター二人が仕事を終えたら、皆をあそこに連れていくつもりだ。今はじっと待ち、ついでに自分のアリバイも作っておく。
九条凛は高橋美咲に何かあったと察し、ウェイターに捜索を頼もうと外に出た。だが、そこで思いがけない人物と鉢合わせた。
「神谷海斗?なんでここに?」
九条蓮は相沢翔を迎えに行っており、神谷海斗は一人で退屈していた。九条悠真がいると知り、様子を見に来たのだが、九条凛と出くわすとは思っていなかった。
なんという偶然だ。
九条凛を見て、神谷海斗は少し眉を上げた。「君もここに?」
「美咲と一緒にパーティーに来たんだけど、美咲がいなくなったの!」九条凛は神谷海斗の袖をつかみ、焦った様子で言った。「ここの人に知り合いはいない?誰か探してくれない?」
神谷海斗はそれを聞くと、表情が一気に険しくなった。
九条家軽井沢別邸は九条蓮の持ち物だ。人探しなら彼に頼むのが一番早い。それに高橋美咲は九条蓮の女だ、当然知らせるべきだ。
神谷海斗は九条凛の手首をつかみ、「君の兄さんもいる。行こう、すぐに知らせよう」と言った。
九条凛は一瞬戸惑ったが、今はそんなことを気にしていられない。美咲の安全が最優先だ。すぐに神谷海斗と一緒に向かった。
最上階の一室で、九条凛と神谷海斗は九条蓮を見つけた。
九条凛は彼の顔を見るなり、慌てて「お兄ちゃん、大変!美咲がいなくなった!」と叫んだ。
九条蓮の表情は一瞬で険しくなり、目に冷たい光が宿る。「どういうことだ?」と低い声で尋ねた。
九条凛はできるだけ簡潔に状況を説明した。
「美咲と一緒にパーティーに来て、途中で美咲がトイレに行くと言ったきり戻ってこない。何かあったと思って近くのトイレを全部探したけど、どこにもいなかったの」
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