Chapter 255
卒業、おめでとう
「必要ない。」と九条蓮はきっぱり断った。
「なんで?私が美咲さんのそばにずっといられるわけじゃないし、誰かつけて何が悪いの?どうしてダメなの?」と九条凛は不思議そうにぼやいた。
九条蓮は長身をソファに預け、目元に柔らかな色を浮かべた。少し間を置いて、ゆっくりと言った。「誰かをそばに置くのは、監視するのと同じだろう。俺は彼女に自由をあげたい。」
「ああっ!もう、甘すぎる!」九条凛は胸を押さえ、何トンもの恋愛成分を摂取したような顔で、安堵と満足が入り混じった声で言った。「ここに卒業を宣言します!」
九条蓮がそんなことを言うなら、もう自分が教えることは何もない。他の男なんて相手にならないくらい完璧だ。
九条蓮はゆっくりと口元に微笑みを浮かべた。
まだ高橋美咲を本当に振り向かせるまでは、本当の意味で卒業とは言えないのだが。
最近、九条インターナショナルでは仕事が立て込んでおり、九条蓮も忙しくなっていた。
毎日数えきれないほどの会議があり、さらに大阪での複雑な案件も重なって、九条蓮はもう高橋美咲の運転手を務める時間もなくなっていた。
その日、退勤前に高橋美咲は九条蓮からメッセージを受け取った。今夜は残業になるので、すでに真壁直人に送迎を頼んであるという内容だった。
高橋美咲は真壁直人にはそれなりに慣れていたものの、やはり別の男性に家まで送ってもらうのは少し気まずく感じた。すぐに断り、自分でタクシーを使って帰るし、途中で買い物もしたいと伝えた。九条蓮はそれ以上強く言わなかった。
退勤時間になり、高橋美咲は道路脇まで歩き、スマホを取り出して配車アプリを開こうとした。すると、目の前に一台の車が止まった。
窓がゆっくりと下がり、運転席には見慣れたハンサムな顔が現れた。
「翔?」高橋美咲は驚いて声を上げた。
彼は大阪に戻ったはずでは?なぜまた突然東京に現れたのか。それに、なぜ会社の前で待っていたのか。
相沢翔は不満げに「やっと仕事終わったのか。1時間も待ったんだぞ。早く乗れよ」と言った。
高橋美咲はドアを開けて乗り込み、車はすぐに走り出した。
車内で高橋美咲は、なぜ相沢翔が来たのか尋ねた。
それに対し、相沢翔は目をむいて鼻で笑った。「母さんがもっとお前の力になれって言うから、今回は出張で東京に来させられたんだよ。」
実際には、九条蓮と会社の提携について話し合うためだった。
相沢翔はまだ相沢グループを完全に引き継いでおらず、実権は基本的に相沢剛が握っていて、翔はその補佐をしながら勉強中だった。本来ならこの件も相沢剛が担当するはずだった。
だが高橋美咲のこともあり、相沢久仁子が翔を東京に送り出した。翔は仕方なく高橋美咲を探しに来たが、時間を読み違えて九条インターナショナルの前で1時間も無駄に待つ羽目になった。
それを聞いた高橋美咲は何度も頷き、にっこりと笑った。「おば様、本当に優しいよね。昔からずっと助けてもらってるし、今度ちゃんとお礼しなきゃ。」
「もういいよ。お前が元気なら母さんも安心だ。」
その話題になったとき、相沢翔はふと目線をずらして尋ねた。「そういえば、九条蓮とはどうなった?前に自分からアプローチするって言ってたけど、もう落としたのか?」
「まだだよ。」高橋美咲は首を振った。
相沢翔は呆れた顔で「お前、本当にダメだな。男一人も落とせないのかよ!」と全力でバカにした。
高橋美咲はむっとして「よく言うよ!この前、詩依が怒ったとき、自分で何とかした?私が助けたから仲直りできたんじゃない。そんなに偉そうに言うなら、自分で取り戻してみなよ!」
相沢翔は高橋美咲に過去の恥を暴かれ、急に大人しくなった。
「とりあえず飯にしよう。ついでに九条蓮も呼べよ。」
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